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新人の本庄はたまにミスをやらかすものの一生懸命仕事を覚えてそこそこ戦力になるようになった。前の支店での指導も良かったようだ。
ある程度慣れてきたところで、金曜日の夜に歓迎会が開かれた。本庄はザルで何でも飲んだし飲んでも顔色ひとつ変わらなかった。
「何だお前~酔わんのか? つまらんやっちゃな~」
「飲み足りないんだろ、もっと飲め飲め!」
「はーい! ありがとうございます」
上司に絡まれてもニコニコ対応してる。大した奴だ。
俺は少し離れた席で後輩を眺めながら女性職員たちと談笑していた。そしてうっかり飲みすぎて気付いたらテーブルに突っ伏していた。
――あれ……? やべ、身体がうまく動かないぞ。
「ねぇねぇ~、誰か池沢くん送っていける人〜!」
「はーい、俺行きます」
本庄の声だ。
「え? でも今日の主役が二次会行かなくてどうするの?」
そうだそうだ。
「俺実家なんすよ。終電逃したら怒られるんでここで失礼します!」
「あら、最近の子は真面目ねぇ」
――ええ? いいのか?
「せーんぱい! 大丈夫っすか? も~仕方ないですねぇ。俺が送ってきますね」
――つーかお前向こうで支店長と飲んでたんじゃ……。
「じゃあ、本庄くんお願いね」
「今日は皆さんありがとうごばいました! お疲れ様でした~」
ざわざわする店内を抜けて、本庄は俺を担いでタクシーに押し込んだ。
「先輩大丈夫? 住所言える?」
俺はなんとか住所を伝えてタクシーで送ってもらった。上司が気を利かせて、送り役を買って出た本庄にタクシー代を渡してくれていた。
――やべー。これは週明け俺が怒られるやつ……。
「ほら、降りますよ! 歩けます? 肩貸しますから」
「ありやと~」
「何階の何号室? 鍵は? 鞄の中?」
「かばんのポケット~ななかい~ななまるに~」
「はいはい」
本庄が俺を片手で肩に抱えたままなんとか部屋の鍵を開けようとするが、なかなかうまくささらずガチャガチャやっている。
すると中からドアが開いた。篠田だ。
「一樹さん? もう帰ったの?」
「……!」
「あ~しのだぁ~。池沢一樹、ただいま帰りましたっ! あはは」
酔った俺に苦笑しつつ、篠田が本庄を見て頭を下げた。
「どうもはじめまして。えっと……」
「あの、自分は池沢さんの後輩の本庄です! 池沢先輩をお送りしました!」
「あーこの酔っ払いを押し付けられたわけか。ごめんね、ありがとう。よかったらコーヒーでも飲んでってよ」
「はい!」
俺は篠田の部屋のベッドに転がされた。開け放ったドアからリビングの声が途切れ途切れに聞こえてくる。
「やっぱり本部の篠田さんですよね! 前の支店にいた時……」
「君が新しく……池沢さんの…」
そして俺はそのまま意識を手放し眠りについた。
◇
翌朝目を覚ますと、横に篠田の姿はなかった。休日なのに珍しく先に起きたのかな? と思ったが、そうではなく篠田は別室で寝たらしい。
というのも、リビングのソファで大男が寝こけていたのだ。
「あれ……本庄……?」
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