墓荒らし部に乾杯

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「嘘つくなよクソカス墓荒らし」  面白くねえよ、バカが。そんなはずがないだろ、ぽろと最初に出たのは部長への思ってもいないような悪口だった。しんと静まり返った。関係のなさそうに、高木と関の2人はもぐもぐと気まずそうにそこにあった唐揚げを食べている。 「ごめん、本当に」 「なんで知ってんだよ、お前さ」  目が泳いでいる。関は流石に何かしっかりしないとなと覚悟したのか、高木に全部食わせていたいろとりどりのサラダをちゃんと自分でも食べようとして、静かに鼻をつまみ、とりわけ嫌いだった生のニンジンをサイレントモードでえずきながら、吐きそうになりながら食べている。  一生懸命にサラダを食べた関を横目に見つつ、高木はやっぱり同じ部員が死んだことを心配しているようで、ちゃんと話を聞いている。 「斉藤さんとは同じ高校なの、知ってるだろ」 「お前、そういや同じ高校行ってたよな」 「そうだよ、それでなんだけどね。たぶん去年か一昨年くらいに、高校の同窓会があって、それでその斉藤さんと仲良かった友達に聞いたんだよね」  頭が真っ白になった。由美は私とは違って勉強をしっかりしていた。だから私はごめん由美、理科ノートの考察見せてなんてよく言っていたものだった。だから私の中学二年生の理科ノートの考察は、いつも由美の言っていたことと全部おんなじで、それで。  歴史が特に得意なやつだった。私は漢字もカタカナも覚えらんないから、歴史は特に嫌いだった。いつもは静かにおとなしくしているのに、歴史なんて何の役に立つんだよと言った時だけ、そんなことないよ!と否定してくるものだった。鈴木に比べりゃおとなしくて可愛かったけど。  で、それで勉強が得意だから、私が人生五周くらいしても行けないような地元でも有名な進学校に進んだんだ。由美ちゃんすごいね、と周りが私と由美の周りで褒めるものだったから、地元でも行ったら終わりだなんて密かに言われている随一のバカ高校に進んだ私もなぜか誇らしかったのだ。 「なんだお前、由美とおんなじ大京大大京に進んだのがそこまで誇らしいのかよ、自慢したいってのかよ。そこの同窓会に参加できる自分、高学歴ってか」  本心では鈴木にマウントを取ったのかなんて問い詰める気はなかった。ただそうして由美子が死んだのか、なんだか今日もし由美に会えたら、久しぶりによく私たちが行ったショッピングモールで由美に似合うような服を選んでやったりとか、最近何してんだよ、なんてただ普通に関わりたかっただけだったのに。  自分が何もできなかったことが悔しくて仕方なかった。
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