墓荒らし部に乾杯

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「だから何、お前」 「部活勧めてくれて、ありがとって」 「あっそ」  ガリガリと、スコップで硬い墓を荒らしている。女子中学生2人には男性1人が入る分の墓を荒らすのはあまりにも重労働だった。役立たずだった由美は、まあ入部当初に比べればまあまあ掘れるようになったと思う。まあスポーツ万能な私には到底敵わなかったけれど。 「あっそじゃないよ!」 「今土掘ってるから、要件は短めにしてよね」  私は昔っから、悪い癖だよ、本当に素直に物を言うことができなかった。そうして適当に要件は短めにしろとかあっそとか、本当は感謝してくれることが嬉しくて仕方がないのに。そんなんだから、私の知らないうちに、事故だ事件だ病気かで、由美は死ぬのだ。なんもできないくせに。バカでしかないくせに。 「んふふ、私さあ、舞花ちゃんの知ってる通り、運動神経全くないわけじゃん。運動音痴って、よく言ってたよねえ」 「うん」 「否定ぐらいしてよ!それでもねえ、私、幼少期からおとなしくてこんな感じで、舞花ちゃんとかお母さんとか以外とはね、まともに喋れないのね」 「ついでにコンプレックスもマシマシだしね」  余計なこと言わないでよね、と本当にぷんぷんと怒っていた。私は少女漫画なんかのブリブリとした気持ちわっりいぶりっこなんか大っ嫌いだった。それでも由美は、そんなのとは違う上品さがあった。由美をなんも知らないようなのが、斉藤って、気持ち悪いぶりっ子だよななんて言おう物なら、私は言い返した。そのせいで私はたぶん嫌われていたかもしれないけど。 「でもそんな私でもね、墓荒らしのおかげでちょっとばかし体力はついたかもしれないし、高木くんと関くんとも最近話せるようになってきたの」 「ふうん」 「今もね、最初は墓荒らすって私には向いていないって思ってたけど、意外と無理だって思ったものやってみるのもいいのかもなんてさあ」  鈴木の言っていたことが本当かもわからないのに、そんなどうでもいいような、いつもと変わらないような墓荒らしの日常が思い起こされて、それで、私は柄にもないのに、蜂に刺されても泣かないくせに。あんなバカ墓荒らし部長の言うことなんか信用しちゃいけないくせに。
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