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あの賢いけどバカで、自分を好きでいてくれる人がわからない由美のことだから、私にそんなことを頼んだんだ。私がそんな、大義をもって、バカみたいに感動エピソード!みたいな安っぽい話をもって墓を掘りに行くと思うか。私のことなんだから、お前をどうせあいつはどうしようもないやつだったなんて悪口を言いながら掘りに行くだろ。
「ごめん、なんか斉藤さんのこと、本当に仲良かったんだね。まだ乾杯したばっかだけどさ、ここら辺でおひらきにしちゃおっか。またもっと落ち着いた時に、都合が合う日に同窓会しよっか、ね?」
人の心もねえくせに、由美とただ中高の同級生でしかないくせに、傷ついたかつての同級生を慰める優しい自分みたいなふりをした鈴木が嫌いで嫌いで。私はすっくと立ち上がって、
「二次会」
「え」
「二次会は!!!あいつの!!!墓荒らしだよっ!!!」
どうしたんだよ鈴木。お前、お前の好きな墓荒らしだよ。関、我慢せずに全部無理した野菜全部吐けよ。地獄の由美が泣いてんぞ。高木、お前は由美に好かれてたんだぞ。それをお前なあ、今何してんだって、カリスマネイリスト?ざけんな。
最低だから、私はバカで人格者なんかと逆みてえなクズで、墓荒らしされねえようなクソ女だから、私はあいつの墓荒らしを二次会のネタなんかに使ってやんだよ。
「高木!お前さあ、由美に『かっこよくて、最初は怖い人だと思ったけど、実は優しい人なんだよね。そういうところが好き』って言われてたの!お前、墓で『俺もだよ由美。天国行っても愛してる』って言ってやれよ!」
「俺?え俺?」
「どうせお前彼女も嫁もいねえだろ!」
「そうだよ悪かったな」
「関!ニンジン、由美に全部捧げろ!あいつの好きな食べ物ニンジンだぞ!」
「ニンジン好きな人なんていたんだ」
「鈴木」
「何、急に元気だねえ」
「紅一点命令だよ、お前部長だろう。由美がめちゃくちゃ嬉しがるような、とびっきりの掘り方、見せてやれよ」
「ハーゲンダッツね」
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