納豆争議

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だからこそ今何かしら問題になっている、LGBTなんてのの中の、ゲイと呼ばれる人たちも、もしかしたら対象にしてしまう人も中に入るかもしれないけれど、そこに対して好みを抱くものではないのだ。よく知られた男女同士の恋愛漫画を読む人たちだって、現実のカップルに対して好みを抱くものではないだろうし(いやどうだろう)普通に三次元同士の知らんカップルを見て、ぼそっと「リア充爆発しろ」なんて言うのと原理は同じである。 「ってか茜ちゃんさ、さっきの授業ののぶもり見た!?」 「見た。あれはヤバい」  しかし時に例外は現れる。 「普通さ、現代の国語の授業の時に数学の先生が急に現れて『森ちゃん調子ど?俺自習させてて特にすることないから来ちゃった』なんて言わないよね!?」 「そうそう、普通隣のクラスでもなく、わざわざ隣の隣のクラスにまでなんで遊びに来るの、その理由は何って話よ!」 「私ノブの『もりちゃぁん』ってすっごいいい声でやってくるのほんと大好きなんだよねー、他の先生たちはさあ、『森田せんせー』って適当に用事があってプリントだの持ってきたり、前の授業でなんか忘れ物しちゃってたから取りに来てたりなんてそんなものなのにねぇ、なんか一人だけねっとりしてるっていうか」 「わかる。ねっとりしてる。でもそこがいいし私今回の現代の国語頑張る。あれだけで頑張れる」 「いや数1やりなよw、今回ノブが三角比大事だからテストは難しめに作るなんて言っちゃってるんだし?」 「だっるー。のぶもりが秘密でイチャイチャしてるところの壁になりたい」 「壁になっても人型に浮き出ちゃうと思うからね、私は窒素になる」 「いやたぶんね、これ予言だけど三ヶ月後に森田先生『私ごとなんですが、そのー、ノブ先生と籍を入れることになりましてー、』みたいなことクラスの前で言うよっ」 「当たったことないその予言。でもなんかやりかねない雰囲気出してるよね、ワンチャン当たって欲しいんだけどなあ」 「正直赤点になる確率より結婚する確率の方が高いっしょ」 「どんだけ秀才なんだよ」 「いや赤点になる確率はめっちゃ高い、それ以上に結婚する確率の方が高いってことよ」 「クソ高いじゃん」  中学校は面白い普通の三十代くらいのいい先生がたくさんいたけれど、それに比べてこの高校は異常に先生の質が良い。それが現れた例外、森田先生(通称森ちゃん)と近藤信幸先生(通称ノブ、ノブ先生)の「のぶもり」である。  まだ森田先生は二十代前半で若くてフレッシュ、元気でよく学生に間違われるような童顔で、身長が低いことを気にしているかわいいタイプの先生、もちろん男性である。一方ノブ先生は二十代後半で森田先生よりも年上、キリッとした顔に高身長で女子からの人気はとんでもなく高い、まあ森田先生ももちろん高いけれど。もちろん男性である。とにかくノブ先生は森田先生に対して距離が近い。休み時間でも授業中でも構わずに、隣の隣のクラスを担任していると言うのにとにかく森ちゃあんと言って遊びにくる。  実在の人物どころか、森田先生は私たちのクラスの担任であるし、表立って「ノブ先生ってめっちゃ森田先生のこと好きっすよねw結婚するんすかw」みたいな煽りを本人にすることは絶対にしないし、そんなことをしたら私たちの密かな楽しみがなくなってしまうどころか、ウザいことこの上ないし、とんでもなく気持ち悪いじゃないか。  ただこうして昼の時なんかに仲間内で、絶対に本人にバレないようなところで、私たちは空気か何かになったように本人たちの前では存在感をけし、ヒソヒソと仲良くしているのを見守る、それが腐女子としての在り方なのである。 「にしてもね、あんな先生がいたもんじゃあ、それまで何とも思ってなかった女子だってたぶん『納豆』増えちゃうよねえ」 「納豆は大豆にはもう戻れないって言うもんねえ」 「あんな距離近かったら『納豆』はほら、誰だってニヤニヤしちゃうよねえ」 「私大丈夫かな、ニヤニヤしてるのバレてないといいんだけど」
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