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「文句全然聞いてないからぁ、楯突く奴らギッタンバッタンしてぇー」
よく歌っていた歌だ。綺愛羅は歌が上手かった。ミュージカルか何かに入っているのがあやつのプライドの全てらしかった。
私はその時、音楽のテストで合唱曲の「虹」という曲をか弱い声で、精一杯歌っていた。綺愛羅には歌う価値のない名曲だ。
「真弓ぃ、何あれ。全然声出てないじゃん、ひひっ。やっぱキアラはミュージカルやってるから真弓と違って上手いの」
「だよね、うまいよね」
頑張ったのに。私なりに。泣きそうだった。
「今日の頑張ってた人大賞は、島田真弓さんです」
帰りのSTで、神谷くんが言った。彼は顔の整っていて、綺愛羅に好かれていて周りから可哀想と言われていた。私みたいな人だった。
小学校中学校特有の、帰りで今日1番頑張ってた人を褒めるというコーナーだった。
「真弓さんはいつもおとなしいのですが、歌をよく頑張ってました」
「あ、ありがとうございます」
私は神谷くんのことを好きでもなかったし別に神谷くんも私に興味はなかったと思う。それでも見てくれた人がいたのは嬉しかったのに、
「何お前、あいつのこと好きなのかよーっ」
余計なことを言うなとそのお調子者の男子に心の中で叫んだ。案の定、綺愛羅はとんでもなく不機嫌だった。
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