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「は」
それは私にとってとんでもない裏切りと同じことだった。あの森田先生が、小さくて可愛らしい方が右だって?ありえない。ユズリコだってそうだ、私はとてつもなく、リコユズが地雷、受け入れられないのだ。それともりのぶというのは同じだということに他ならなかった。リコだって、身長は高くなくて、だからこそ二次創作じゃ右として自らが受け入れられているのであって、王道のパターンとはいえ低身長が右に回るのは当然の道理ではないか。
「いやありえない」
私は急いでそんなことを否定したし、茜ちゃんにはそんな発想をすぐに捨てて欲しかった。そのくらい、それはありえないことであったし、目の前で好きだった人が知らん人とイチャイチャし始めたらたぶんこんな感じの感情なんじゃないかと私は予想した。今まで信じていたのに、そんなことを言い出すとは思わなかった。
「えなんでよ、別にありえなくないじゃん」
「そんなことはない、第一今まで、森ちゃんとノブ見ててさあ、どこにそんな要素があったの」
「いやだってさ、若くて元気で可愛い先生が裏ではちょっと気強めになってるかもしんないじゃん」
「それは妄想に過ぎないじゃん」
「そんなこと言っちゃったらさ、確かに先生の中じゃのぶもりだって覇権かもしれないけどさ、そもそもが全部妄想なわけでしょ?」
「そんなことないっ」
どうしてそんなことを言い出すのか全く意味もわからないし、リコユズだって私が嫌いなのは茜ちゃんもよく知っていたことだった。だったら、おおよそ似ているようなもりのぶだって、嫌いだってわかるだろうと思ってしまった。昨日だって、左の適性がありすぎると言ったのはそっちの方じゃないか。酢の物を食わされているようだった。寿司を食わされているようだった。
そっちだって妄想に過ぎないじゃん。そう言われたような気がして、私は茜ちゃんより先に教室に帰って行った。
その次の日、私はお昼どうしようかとずっと悩んでいた。自分があんなことを言ってしまったことに後悔していたからだった。そんなことは目に見えていた。その元々が、言い争った原因がもりのぶだって?正直私はリコユズを無理に勧められたわけでもないし、思ったよりも酷いようなことを言われたわけじゃないんだった。
それを私が、どうしてかちょっと苦手なものを言われただけで裏切られたように感じて、軽い喧嘩のようなことになってしまったのか、思い返して見ればそんなことは取るに足りないようなしょうもないことでしかなかった。
それに茜ちゃんはよりによって隣の席で、今日の朝から何も話さずにいるのはとても居心地が悪かった。今日も森田先生は、教卓の前で現代の国語を教えているのはいつものことだったのに、ふと昨日のことを考えたら気がかりで、頭にするりと入ってくるような気がしなかった。むしろ授業の内容が、右耳から左耳に受け流されているようだった。
居眠りをしている人がいるのも、すごく真面目に授業を受けている人がいるのも、真面目に授業を受けていると見せかけてこっそりノートの端なんかに落書きをしている人がいるのもいつもの授業となんら変わらなかった。そしてその中に、こんなどうしようもない理由で友達と喧嘩している私と考えていて、それはどうしようもないくらいどうでもいいことなんじゃないかと。
「森ちゃあん」
誰だったのかは言うまでもなく、ノブ先生だった。ガラガラと少し立て付けの悪いようなドアを横に引いて、またノブ先生は現れた。これまでの内容は全然頭の中に入っていなかったし、ノートの内容だって全然追いついてすらいない。なんなら、私も他の人と同じように居眠りをしようと思っていたところだった。居眠りしなくてよかった、そう思った。
「なんですかノブ先生、用事でもあるんですか」
森田先生は、いつもノブ先生が特に用事もないのにこのクラスに遊びに来ることを一番よくわかっていたのにそんなことを聞いていた。わかってるのに、会いたいから聞いているんじゃないのか!という発想がわき、今すぐ誰かに話してしまいたいような気分だった。
そうだった。昨日、あんなことを言ってしまったから話しづらいんだと私は昨日の私を殴りたい。するとノブ先生がちょっと自分に自信を持ちまくっていて、ややナルシスト(キャラ)気味なところがあまり好きではない、最前列のクラスメイトである田中くんは、
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