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「そんなまさか。私みたいな背格好した人なんてどこにでもいます。それに私、その日は塾に行っていたとはいえ居残りさせられてたんですよ」
「そう、かもなあ」
「西新町は田舎じゃないので、それなりに大野くん堀井くんみたいにたくさん人がいます。それにそういった犯罪の被害者って、必ずしも女の子とは限らないじゃないですか」
「まあな」
納得していないのも当然のことだった。私が精一杯に見ていないと嘘をついている中で、先生だけが私の頭の中をのぞき込んでいるみたいだった。私にはおじさんの裸だけがなん度も何度も反芻されていた。それがトラウマなのかは知らない。
「島田」
「だから私、全然関係ないんですよ」
「無理はするな。そんなに一気に喋るなんてお前らしくない」
やはりと見透かされていた。逆に正当化しようとしたのがベラベラとあわてているように見えたらしかった。
「先生は男性だし、島田がもし本当に何かされてたんだったら言いにくいだろう。それに切り替えてすぐに通報するなんてのも難しい話だ」
自分が思っていたことと常識はひどくずれていた。
「受験前だろ、辛いよな。休んで、ちゃんと言えるようになったらどこにでも相談することだよ」
「違う」
「お前の周りには先生もはじめとしてたくさんの人がいるってこと、忘れんなよ」
そうして先生は話はこれで終わりだ、と言って席を外した時に、決めた。
おじさんに会いに行く。
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