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墓荒らしというのは文化的意義にとても貢献していて、その後の文学、たとえば古今和歌集や新古今和歌集にもたくさん出てくるだとか、在原業平は三千人と女性を関係を持ち、その後亡くなった女性には全員墓荒らしをしただとかずっと聞いてもいないのにベラベラと話していたが、私はそれ以外のところが気がかりで仕方なかった。
「あのさ、由美は?」
そういや見てねえな、と関が言った。来ていない理由が何か嫌な理由な気がして、説明できないけれど聞いてはいけないような気がした。それでも私は、由美という人が同窓会に来ていない理由を聞かなければスッキリしないような気がしていたのだ。
「そういやあ斉藤って来てねえよな。俺あんまし関わってなかったから、気づかなかったけど」
「俺も。ってかさ、斉藤と一番仲良くしてたのって川口だろ?お前が知らないんだったら俺は知らないぜ」
高木と関の二人組はあまり興味のなさそうに、知らないと言った。斉藤由美。私が中学生の時に仲良くしていた人の名前だ。たぶんこいつらは知らないだろうけど、引っ込み思案で内向的で他の人と関わろうとしなかった由美を墓荒らし部に誘ったのも私で、チャラそうで怖いと言っていた高木となんとか由美を仲良くさせてあげたのも私だ。仲良くなりたいと言っていた関と知り合い程度には話せるようにしたのも。
「ごめん、川口。ちょっと言いにくいんだけどね」
さっきまでアホみたいに酔っ払っていた部長が真剣な目をしてこちらをじっと見つめていたので、私は仕事の都合か同窓会に恥ずかしくて出られないなんて由美がやりそうな理由ではないことがわかった。それでも、冗談冗談ー、実は斉藤はここにいるぜーって急にふざけて後ろの方からゴミ箱やよくわからない机とかからバーンと恥ずかしそうに出てくるのを期待していた。
「斉藤さん、事故で七年くらい前に亡くなってるんだよね」
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