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納豆争議
私たちは腐っている。
一言で言うと私たちは腐っているのだ。とは言っても物理的に、ゾンビみたいに体が腐っているわけではない。とは言っても、本当に私たちが腐っているのは本当のことなのだ。腐っているのは一言で言うならば精神、性格みたいなものなのだ。それとついでに私たちは一応、まあなんやかんやジェンダーなんかに厳しいご時世ではあるけれども、心も、体も、ちょっと腐っているだけの普通の女でしかないのだ。
腐女子、と言うヤツなのだ。腐っている女子と書いて、腐女子。元は婦女子という少し昔の、それはそれは素敵なお言葉を文字って、読みは「ふじょし」と読む。二重の女子と言うわけでもない、ただ文字の前に、腐っているのだ。腐ったようなものが好きだから、腐女子。趣味嗜好が他の人たちとは違ったような、だから腐女子。
「裕美ちゃん裕美ちゃん、あのさあ、こないだのユズリコやばくない?」
「うわぁぁぁみた、みた、もうほんと可愛いよね、あれもはや公式が腐ってるってゆうかさあ、ほんっとうにかわいいよねっ」
「ボックスで出るらしいんだけど、ランダムっていうからさあ、ユズリハとリコセットで出るまで買うよね」
「でも一つ八百円くらいだからさあ、めっちゃ高いし他のキャラ出たらどうしよっかなあって」
「いや私アキレンも最近推そうかなって思ってたから、アキかレン出てきたら譲ってよ」
「あーまじか、それじゃあ心置きなく買ってきますw」
昼間の弁当を食べるラウンジは、隣に腐ったみかんがいるのにも関わらず、近くのキラキラとした、一軍だのなんだのと言われる女子たちがやいのやいのと好きなアイドルらしき話をしていた。それで私たちは、ユズリハというキャラと、リコというカプの話をしていた。
湊ユズリハ、瀬尾リコ。どちらもアニメや漫画のキャラにいそうなキラッキラとした名前であるし、一見したらクールなボーイッシュ女子のキャラ、くりくりとしたような可愛らしさを持つ女性キャラのように聞こえるけれど、どちらもれっきとした男性キャラなのだ。
ユズリハは長髪の銀色の髪をしたハイスペックで、一見はなんの隙もないように見せかけて、それでいて合間に見せるリコだけに見せる甘いような態度、そこがそれはそれはまあ推せるのだ。相手を突き落として、世界一のアタッカーを目指すバレーボール漫画「ブルーモルテン」らしくなく、幼馴染のユズリハとリコが「リコは俺のだから、絶対に他の奴らには突き落とさせない。もしお前がレシーブでミスったとしても、俺が全部このアタックで決めてやって、お前だけにカバーをする」なんて言っちゃうほどのガードマンみたいな。
リコはピンク色の髪をした低身長で童顔だけれど、馬鹿にされるのが大っ嫌いで、少し喧嘩っぽいような、でもかわいい例えるならチワワみたいなキャラ。ブルモ(ブルーモルテンの略)では低身長を生かしてリベロをしていて、一方ユズリハは一見するとあまり関係のないようなアタッカー。でもそこがいいのだ、安易にリベロ同士のカプではなく、まさかのアタッカーとリベロのカプである。やっぱし気が強いから、「お前なんかにカバーなんてされなくても、俺リベロだし。お前は適当にアタックでも打ってろよ」なんてツンを出すのに、ピンチになったら「頼む」ってバレーの得点王であるユズリハに全てを託す。いやあ美しい。結婚するべき(当然)
ついユズリコ推しに負けてしまって、私の治らない癖である好きなことになると早口になってしまうというのが出てしまった。男性キャラ同士であるのに結婚するべきだなんて、それはどうなのだろうかと、私たちのような存在を知らない人は思うだろう、それが「腐女子」なのだ。
ボーイズラブ。ボーイ同士がラブラブしているのを好む。それが腐女子。略してBL。昔はたぶん肩身も狭くて人数も少なく、それはそれはひっそりとしていたのだろうけれど、今はオタク文化なんかが広まってきて、腐女子の人口も急増しているのだろう。まあこう言ってしまうととんでもない変態のようだと見えるかもしれないけれど、そう今になっては珍しい存在ではない、むしろ知らないだけで街中を歩けば隠れ腐女子なんてたくさんいる、かもしれないのだ。
よくある偏見として、「BLっての好きなんでしょ、じゃあ俺たちで妄想すんなよ」という男クラスメイトなんか。断言しよう、お前らではない!
クラスメイトの男子なんてのは、ただのクラスメイトの男子にしかなり得ない。そこから恋愛になることもない。(いや私の知らないだけであるかもしれないけど)とにかくそんなことを言う人は、ボーイズの中には含まれない。あくまで二次元、そう、ブルモなんて漫画や、ほか腐女子たちを喜ばせるという目的に作られたアニメなんてもので、三次元に興味はない。
それが基本方針であるのだ。
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