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あやめの家系は辻斬りである。
人を傷つけても何も感じない。
いや、感じているのだろう。
短刀を人体に入刀した後に
刃渡を感じながら押し込む行為がたまらなく好きなのだから。
でも、それは生きていく上で禁じられている行為だと教えられた。
あやめがモモに出会ったのは
秋も半ばの公園の木々が暖色に変わった頃だった。
モモは明朗な可愛らしいよく笑う女の子だった。
その朗らかな明るさはあやめの凝り固まった心に
積雪をとかすような暖かな光を差し入れていた。
街のおしゃれなカフェの窓際の席で
二人はコーヒータイムを楽しんでいた。
刃渡の感触を精査しながら
人の流れを目で追うあやめに
「うんうん!美味しい!」
コーヒーのホイップを上唇にたくわえながら
モモが満足げに頷いている。
「あやめちゃんも食べてみて」
不安定に積まれたパンケーキを一切れ
フォークに突き刺すとあやめの口元に突き出す。
無愛想なあやめに似合わず
モモの差し出すパンケーキをそのままパクッと食べる。
すると、モモはとても嬉しそうにニコッと笑う。
あやめにとってその笑顔は
世界を色付ける魔法のようだった。
それが・・
いつからだろう・・
モモの環境が一変したのは・・
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