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日常の崩壊
学校が終わると僕は雄馬くんと一緒に帰路についた。
「雄馬くん、昨日は避難しないでどこに行ってたの?」
「あ……うん。家族が心配だったから家に帰ったんだよ」
「じゃあUFO見たよね。いっぱいいたね」
「うん。物凄い数だった」
「怖かったでしょ? ビーム撃って来たらやられちゃうって思わなかったの?」
「とにかく家に帰りたくて急いだよ」
「途中だんご虫に会わなかった?」
「え、いや……見なかったなあ」
そんな話をしていると雄馬くんの家に着いた。
「じゃあまた明日」
雄馬くんの家は小さな平屋の一軒家だった。古くて恥ずかしいからと、中に入れてもらった事は一度もない。
「雄馬くんの家族って何人なの?」
「お父さんお母さん、それからお祖父ちゃんお祖母ちゃん、あと弟と妹」
「7人家族!?」
「いや、弟が双子なんだ」
「え!」
「それと……」
「まだいるの?」
「あ、いや、何でもない」
雄馬くんは慌てて家に入って行った。
そんなに家族がいるなら賑やかだろうなあと家の中をうかかった。静まり返っていた。まだ誰も帰って来ていないのだろうか。
でも不思議だ。車庫がない。車はないのだろうか。それに子どもがいるのに自転車が一台もない。小さな庭はあるが雑草が生い茂っている。洗濯物を干す物干し台もない。家族が多いのにどこに洗濯物を干しているのだろう。
何となく気になって僕は玄関の扉を開けた。
「雄馬くん……」
家の中は真っ暗だった。返事もない。人の気配もない。そんなはずない。ついさっき雄馬くんが入ったばかりだ。小さな家だから人がいれば分かる。
「雄馬くん、言い忘れた事があるんだ」
少し大きな声を出したがやっぱり返事はなかった。
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