『イリアス』――ギリシャ神話の叙事詩

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Q:『イリアス』には、ギリシアの神様がどっちゃり登場するでしょ。ギリシアの神様というと、やっぱり人間的なの? A:違う~。少なくとも『イリアス』では、人間の方がよっぽど立派だよ~。 Q:単に、イリアスの某重要人物が好きなだけでしょ。 A:違うわ! ヘクトルは某重要人物なんかじゃない! 主役よ主役! どう考えても、『イリアス』の主役はヘクトルに決定よ! Q:わかったわかった……とりあえず、「ヘクトルってなに? 数学用語?」という人のために、『イリアス』の説明、頼むよ。 A:難しい仕事を押し付けて……。 トロイア戦争って聞いたことある? トロイアは、今のトルコの端っこ。そことギリシアが戦争するわけ。美女がきっかけでね。 トロイアの王子、パリスが、ギリシアのスパルタの王妃ヘレネに一目ぼれしてしまい、二人は手に手を取ってトロイアへ駆け落ち。これにギリシア側が怒り、美女ヘレネを取り返すぞ!……これが戦争のきっかけ。美人の人妻を巡る争いなんて、きゃ~♪ で、10年の戦いの後、ギリシアが勝ちトロイアは滅び、ヘレネはスパルタに戻るわけ。 Q:あんたが好きそうな話だね。じゃ、『イリアス』では、その戦争の一部始終が語られてるんだ? A:そう思うでしょ? 分厚い岩波文庫で上下巻二冊も使っているから、戦争の始まりから終りまで歌われているって。 ははは、違うんだな。『イリアス』は、10年の長いトロイア戦争のうち、9年目のせいぜい2か月ぐらいの事件を扱ってるだけ。1日の戦闘に文庫本100ページぐらい使ってくれる。これ、スポーツ物の少年マンガだよ。甲子園の一試合を、半年もかかって連載するのと同じ。 とにかく、戦争のきっかけになったロマンティックな駆け落ち話は出てこないの、シクシク……。 Q:泣かなくてもいいから、『イリアス』の話を進めてよ。 A:だって、駆け落ち話好きなのにさ……。ここから『イリアス』の話に入るね。 トロイア側では、パリスのお兄さんのヘクトル王子ががんばるんけど、結局、ギリシア側のアキレウスに殺されてしまって、おしまい。 なんだ『イリアス』って文庫2冊も使ってるくせに、話はあっさりしてるなあ。 Q:いくらなんでも、省略しすぎだよ……。そんなにヘクトルって、あんたの好みなの? A:客観的にも『イリアス』で一番ファンが多いのは、彼でしょ。あたしにしちゃ珍しくメジャー好みだわ、ほほほ……。 あたしが知ってる限り、解説書でもヘクトルのポイント高いもん。
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