『イリアス』――ギリシャ神話の叙事詩

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Q:相変わらず思い込みが激しいようで 少女マンガのヒーローの最も大切な条件はね……「愛する人は君ひとり」。ルックスのよさは大前提だけど、これは絶対に外せません! 他の英雄なんて、戦争中に関わらずきれいなお姉さん侍らせて喜んでるけど、ヘクトルだけは違うわ! 彼は、愛妻のアンドロマケ一筋! 実際に、『イリアス』には、人間・神様問わずいろんな夫婦が登場するけど、仲良し夫婦はこのカップルだけ。あとは……推して知るべし。ゼウスとヘラは険悪夫婦の典型だけど、てっきりラブラブと思ってたパリスとヘレネも仲悪いんだわ。 Q:ヘクトルの話はもういいよ。じゃ、パリスとヘレネの話をしてよ。仲悪いの? A:ヘレネは、トロイア戦争の元凶の美女。だから「ほほほ、私のために男たちが戦ってくれるのね~」と、悪魔的な女王様ぶりをはっきしてくれるかと期待したのに、全然違う~。 パリスと駆け落ちしたころは、ラブラブだったヘレネ。でも戦争がおこり9年も経つと、パリスが非常事態には頼りない、ルックスだけが取り柄の男とわかってしまったんでしょ。パリスの頼りなさをなじり、駆け落ちを後悔するばかり。 心はパリスを見限っているのに、ギリシアに戻るでもなく、惰性でパリスの奥さんを続けている。 これ、有閑マダムがジゴロに騙されつつ、縁が切れないケースじゃん。ヘレネは、スパルタ王宮の財宝を持ち出しているから、パリスに貢いでいるわけだし。 ある意味、普通の女性なんだね。あたしは、そういう彼女の弱さ、共感しちゃうな。 Q:美女と共感するって、あんた、ずうずうしいぞ。 A:もう一つ、共感する点があるよ。ヘレネは夫のパリスより、義理の兄さんのヘクトルの頼もしさに密かに惹かれているみたいなの。 ヘレネは、トロイア王宮の一族から冷遇されたけど、プリアモス王とヘクトルだけが彼女をかばったわけ。ああ、ヘクトルってステキ♪
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