古代中国の恋人たち

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(6)樛后(きゅうこう)安国少季(あんこくしょうき)  こちらも、すごーくマイナーなカップルです。  前漢の武帝時代、周囲の異民族の国をどんどん漢の支配下に置いていきます。  この二人の物語は、それら異民族、越人の国、南越(なんえつ)が舞台となります。場所は、今のベトナムの北部にあたるでしょうか。  樛后とは、南越王の后です。しかし越人ではなく、漢の女性です。南越王が太子の時、人質として漢の都、長安で暮らしていました。  その時娶った娘が、後の樛后です。実は彼女、南越に嫁ぐ前、安国少季という男と愛し合う仲でした。  南越王の死後、樛后の若い息子が即位しますが、実権は母の手に。  南越を臣従させたい漢帝国は、なんと、樛后のかつての恋人、安国少季を使者として送ります。  漢政府、えげつないやり方です。  当然二人の仲は再燃し、樛后は漢への臣従を主張。プロパー大臣たちは独立を主張し対立。ついに樛后は、漢の使者たちを入れた宴席で、プロパー大臣の筆頭、丞相の呂嘉を矛で突き刺そうとします。  これは、息子の王が母を取り押さえ、未遂で終わりました。  結局、丞相の呂嘉が反乱を起こし、樛后と安国少季、息子の南越王は殺されてしまいます。二人の不倫カップルは自業自得ですが、困った母親から呂嘉を守ろうとした息子の王が気の毒でなりません。  その後、漢の攻撃により、呂嘉は殺され南越国は滅び、漢の直轄国となってしまいました。  この話を取り上げたのは、樛后が武器を取って丞相を殺そうとする場面に惚れこんだからです。元カレにメロメロで、嫁ぎ先なんかどーでもいい態度。褒められた話ではありませんが、直接武器を手に取る女性は、なかなか珍しい気がします。
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