Chapter.1

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【01】  途絶えているかの様に暗い道は 二人の今後を表している様だった。 磯谷拓也[いそや たくや]は運転しながら エアコンをイジる。 助手席には恋人の 鈴村梨々華[すずむら りりか]が 座っているものの、二人の間に会話はない。 彼女は頬杖をつきながら 無言で フロントガラスの向こうを睨みつけている。 信号で停車したところで 梨々華は口火を切った。 「あたしと別れたいって本気? 」 それこそが 彼女を呼び出した理由である。 梨々華と出逢ったのは 行きつけのアパレルショップだった。 もともと顔見知りだったのだが ある日、彼女の方から声を掛けてきた。 ファッションという 共通の趣味があったからか、 二人はすぐに意気投合した。 告白も向こうからだった。 “いつでも側に居たいです” 二人の交際は長い間続いた。 しかし…… 無言のまま信号が青に変わり 拓也はアクセルを踏み込む。 梨々華は、拓也にとって重すぎた。 口癖と化した“いつでも側に居てね”に なんだか窮屈さを感じていた。 それが理由である。 「あたし達、付き合い始めて何年? 」 「……7年くらいかな」 「ずっと側に居たのに 今さらサヨナラって訳? 」 怒ると質問責めしてくる所も変わらない。 もうウンザリだった。
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