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「なにトロトロ走ってんの?
これ以上
時間を無駄にしないでくれない? 」
「このっ……! 」
梨々華に怒鳴りつけようと
横を向いた瞬間だった。
ドンッ
車が何かとぶつかる音がした。
慌てて拓也は急ブレーキを踏む。
「なに……、今の……」
流石の彼女も顔が青ざめていた。
拓也はフロントガラスの向こうに
目が釘付けになる。
青いチェック柄の服が見えた。
拓也の全身から血の気が引く。
呼吸が上手くできなくなり
口から息を吸うのが精一杯だった。
「あれ、人……? 」
どちらかが発した言葉が脳内で木霊する。
動けない拓也に変わって
梨々華が車を降り、“何か”に駆け寄った。
屈んで
“それ”を見つめている後ろ姿が見える。
拓也は慎重にシートベルトを外し、
ドアを開けた。
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