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「どうだ……? 」
我ながら間抜けな質問に
梨々華は沈痛な面持ちでかぶりを振った。
栗毛色の柔らかそうな髪が揺れる。
やっちまった……
拓也の視界が真っ暗になる。
故意ではないとはいえ、
人を轢いたらどうなってしまうのか。
懲戒免職は免れなく
懲役や罰金刑、
遺族からの民事訴訟もあるだろう。
いや、自分の事だけではない。
たった今、拓也はひと一人の人生に
終止符を打ってしまったのだ。
その罪を一生背負って
生きていかなければならないのだ。
「……や、拓也」
「え?」
「デカい布とかない?
毛布とかバスタオルとか何でも良いけど」
「あ……、ビニールシートなら。
でも何で? 」
「拓也、落ち着いて聞いて」
梨々華がいつに無く
真剣な眼差しを送ってくる。
「このまま
通報するならあたしは止めない。
それはそれで間違っていないと思う。
でも、今なら他の選択肢もある」
「な、なんだよ……? 」
「無かった事にするの、今夜起きたことを」
そう言うと梨々華は
トランクから青いビニールシートを出すと
テキパキ動いて“それ”を包む。
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