壱 地元の心霊スポット

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「ま、外側と違って中はスゴイかもしれないからな。とりあえず入ってみようぜ?」  すると、モッチャンとは対象的に理知的で勉強もできるサンロウが、そう言いながら懐中電灯を点けてバリケードの方へと歩き出す。  学校の成績はなかなか良いが、見た目はやっぱり俺達の仲間だけあって、イカついガタイに長髪をオールバックにしたマフィアのような風貌をしている。  ちなみに残りの二人も紹介しておくと、バリバリのヤンキーでケンカっ早いが昔からの親友であるエバラ、一見、おとなしそうだが空手をやってて実は一番ケンカ強いミハラである。  一方の俺はというと、髪を金に染めて片耳ピアス開けてるくらいの、度胸も腕力もないくせにいっちょまえにツッパって見せている、どこにでもいるような中途半端な不良だった。 「タカロウ、ニッパーある?」 「…ん? ああ、ほらよ」  しゃがみ込んだサンロウに訊かれ、もちろんそのつもりで持って来ていた俺は鞄からニッパーを取り出すと彼に手渡す……ああ、タカロウというのが俺の仇名だ。 「これくらい開ければ入れるな……さあ、来店と行こうや」  隙間ありまくりのやる気のないバリケードなので、まあ、強引に入ろうと思えば入れなくもなかったが、張られた有刺鉄線を二、三本切り、広く安全な道が開通すると、少々キザな台詞を口にサンロウが真っ先に入ってゆく。 「なんか、ジンギスカン食いたくなってきたな」  また、バカなことを言うモッチャンとともに、俺達もその後に続いて建物の方へと向かった。 「入口はこの奥かな?」  サンロウが懐中電灯で照らす先、台形の正面にはぽかりと正方形の暗闇が口を開けており、そこが店のエントランスのようである。 「鍵かかってたら厄介だな……」  形ばかりだがバリケードがあったため、エバラがそんな懸念をぽつりと呟いたが、それはまったくの杞憂だったようだ。  かつてはシャッターが閉まっていたらしきエントランスを入ると、これまでに訪れた先客(・・)達により、その奥にあるはずの入口のドアはすっかり破壊され、誰でも自由に出入りできる非常にオープンなお店となっている。
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