壱 地元の心霊スポット

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「ま、なんでもいいや。幽霊さ〜ん! いるなら出ておいで〜!」  しかし、そんな細かいことは気にしないとばかりに、モッチャンはおちゃらけた口調で霊に呼びかけながら、たいそう愉しげにカメラを回し続ける。  もっとも、そんな呼びかけで簡単に幽霊が出てくるわけもないのだが……。 「……お! 冷蔵庫っぽいのがあるぞ? ここに、人肉入れてたのかな?」  そんな時、一足先に奥の厨房へ向かったサンロウが、何かを見つけて声をあげる。  俺達もそちららへ行ってみると、確かに巨大な業務用冷蔵庫と思しきものが、壁一面を覆い尽くすが如く設置されている。  ま、ウワサ通り人肉は扱ってなかったとしても、焼肉屋なんだから大型冷蔵庫があるのは当然だ。 「さあ、人肉は入ってるかなあ……」  さっそくモッチャンがそちらへ近づいて、片手でカメラを構えながら大きな扉を開く。 「チッ…空っぽかよ……」  だが…というか当たり前だが、閉店してから長い焼肉屋の冷蔵庫に人肉はもちろんのこと食材が入っているようなこともない……ステンレス製の銀色に輝くその内部には、腐った残骸一つなく、綺麗さっぱり完全な空っぽ状態だった。  その状況も、この店がウワサにあるような不測の事態で潰れたのではなく、計画的に閉店となったことを言い表している。やはり、ここは単なる廃墟なのだ。 「おおーい! 店長さ〜ん! 人肉が品切れですよ〜! 仕入れて来てくださ〜い!」  冷蔵庫のその様子にますます興醒めしたものか、またモッチャンがふざけて挑発的な台詞を口にしている。 「こっちはトイレだな……一応、男女に分かれてるのかな?」  かたや、同じく冷蔵庫への興味を失ったサンロウは、すでに厨房を出てトイレ跡の方へ向かっている。  再び俺達も後を追うと、トイレは思った以上に狭かった。  大の方に和式の便器しかないところが時代を感じさせる……男性用の小便器はすべて割られているが、俺達のような来訪者がしたものだろうか?
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