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「え、違ったの?」
「違くない、違くない、ずっと心愛が彼女ならいいなって思ってた……」
一度緩んだ言葉は、勝手に紡がれていく。モテない男の一人妄想話だ。
「好きだって何度も俺、言ってたよな?」
「何回も口にしてくれたね」
「今日は何が良かったの?」
「良かった、というか……好きってしか言われなかったから、ありがとうって」
当然のことのように、呟く。あぁそんな姿も愛おしい。心愛の中で、受け取るだけの感情だったと言うことか。
勇気を出せなかったうじうじ俺はいつのまにか、姿を顰めていて、自信が身体中にあふれていく気がする。単純だな、と自嘲的に笑いたくなった。
でも、それでもいい。
「付き合ってほしい、って言ったら付き合ってくれてたってこと?」
「当たり前じゃん」
「俺のこと好きなの……?」
弱々しくて、ウジウジしてる感じがして、自己嫌悪に堕ちそう。これで、違うと言われたら、ショックで死んでしまうかも。
「好きだよ? 好きじゃなかったら二人きりでカフェに何回もデートに行かないでしょ」
「そっか……好きだよ」
もう一度口にすれば、いつものように心愛は微笑む。
「うん、ありがとう」
その顔がやっぱりたまらなく好きで、愛しくて、幸せだった。
<了>
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