恋とココアは甘ったるいくらいで

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 勇気のない俺に呆れ続ける心の中の俺。  自信満々に見つめて、好きだから付き合ってくれと言えればどれほどいいか。好きと口にするだけで精一杯なんだ。 「飲んでたよ。心愛が好きなココアかどうか確かめるために」 「そこまでしてたの」  くすくすと笑う声すら心地よくて、このままでも良い気がしてきた。時々会っては、好きだと伝える。心愛からの好きはいつまでも手に入らないけど。  ココアを好きな1/100でいいから、俺に気持ちを向けて欲しかった。  好きだけで伝われと言う方が無理か。ため息を吐きそうになって、店員さんにココアを頼んで誤魔化す。  目の前にすぐ運ばれてきたココアはやっぱり、甘ったるい香りがする。 「甘いの苦手なくせに」  知ったかぶりするなよ。好きじゃないだけだって。言い返そうと思えば、心愛の頬が赤く染まってる気がする。そんな可愛いところも、やっぱり…… 「好きだ、付き合いたい」 「いいよ」 「へ?」  初めての返事に、声が裏返った。無意識に口に出していた好きは、100回目だったのだろうか。数えてないからわからないけど。
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