恋とココアは甘ったるいくらいで

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 喫茶店で彼女はよく、アイスココアを頼む。甘ったるくて、生クリームが渦巻いて綺麗に乗せられてるやつ。彼女らしいなと思う反面、その甘さに惑わされてる俺自身にため息が漏れそうになる。 「じぃっとみつめてもあげないよ」  心愛(ここあ)は、自分の名前が大好きで、その影響でココアが好きらしい。彼女にぴったりの飲み物だと、俺は思っている。  恥ずかしそうな顔をしたかと思えば、両手でココアを隠す仕草をする。そんな姿すら、愛しくてたまらない。 「取らないよ」 「知ってるけど、あまりにもじぃっと見るからさ」  唇を窄めて、ストローでココアを飲み込む姿に、胸の奥が強く高鳴る。しつこいくらいに、好きを伝えてきた割に、俺たちの関係は甘くない。  恋人以下友達以上。いわゆる、そんな関係性のままだ。心愛が心の内で俺をどう思ってるのか、わからないまま俺はずっとこんな日々を繰り返している。 「そんなに私のこと好きなの? 見過ぎだよ」 「好きだよ、それくらい」  軽い思いじゃない。それでも何度と口にするたびに、心愛に届くうちには軽くなってしまってる気がして悔しい。高校生の恋愛なんて軽んじられても、俺は心愛が好きな気持ちは一生変わらないと思っているし、きっと振られて離れても忘れられないだろう。  それこそ、ココアを見るたびに、愛しい気持ちが募って、好きだと叫び出したくなるはずだ。  そんな自信がある。  それでも、心愛に届くまでに軽くなった()()は、心の奥までは届かないで消えていく。
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