当たり前の日々

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 朝九時、彼を玄関まで見送る。 「じゃあ、向こうで待ってるから」 「うん」 「仕事終わったら連絡してくれよな」 「はーい」  そう元気に返事をする。  俺は彼を抱きしめた。思い切り抱きしめると、すぐに背中に手が回ってきた。 「寂しいなあ」 「またすぐ会えるさ」  抱きしめた彼の体温は温かくて、心地よかった。  この先もずっとこうやって、二人で生きていけると思っていた。  なのに、それは永遠に叶わない夢となってしまった。  彼はもういない。  その時を最後に、彼は帰らぬ人となってしまった。乗ったバスが交通事故を起こし、彼も巻き込まれた。  もう数年経っているのに、まるで昨日のことのように思い出す。
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