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「もう、いいんだよ」
後ろで聞き覚えのある声が響いた。
後ろを振り向くと、彼がいた。これはきっと、夢だ。
「もう、いいんだよ。俺のことは、忘れてくれていいんだよ」
彼はいつもの困り顔で、そう呟く。
「そんなこと、出来るわけないだろ…!俺は、いつまでも、君を愛しているんだ」
「でも、いつまでも好きな人が苦しんでいる姿を見るのは、こっちだって苦しいよ」
ぽん、と俺の頭に手を置き、優しく撫でた。
「俺を思い出すのは、たまにでいいんだ。お前は、お前自身を生きるんだよ」
「で、でもっ…」
「お前は生きなくちゃならない。お前を大切に思ってくれる人を大事にして、長生きしてくれよ」
涙で視界がどんどんぼやけていく。
「これが、俺の願いだ。お前に、幸せになってほしい」
強く瞬きをすると、両目から涙が溢れだした。その瞬間、目の前から彼は消えた。
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