No.3 運命ではない

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No.3「運命ではない」 登場人物名 ・受け 湊……オメガ。陸とは高校時代からの友人。 ・攻め 陸……アルファ。湊とは高校時代からの友人。 ・その他  沢辺、仲村…湊と陸の共通の後輩。 「ッあ……」 朝。 ベッドから降りようとすると、地面に崩れ落ちる。 熱があるような気だるい体に、そういえばそろそろヒートの時期だったかとため息をついた。 「はぁ……」 さっさと薬を飲んで、寝てしまおう。 そうしたら、誰にも迷惑を掛けずに済むから。 重たい体を引きずって、台所へと移動する。 コップに水を入れて、薬を飲んだ。 正直薬は俺の体に合わないのだが、コレしか売られていないから、仕方がない。 ベッドまで戻ると、毛布を頭まで被って目をぎゅっと閉じた。 国の勧めで、高校時代からの友人である湊と番になって、三か月。 そろそろ彼が発情期になるだろうと思っていたのに、一切連絡がこない。 ……発情期になったら言えって、あれだけ言ったのに。 彼が嫌がるから家は別々のままにしていたが、矢張り一緒に暮らすべきか。 そんなことを考えながら、仕事終わりに彼の家へと向かった。 「湊?いるんだろ。」 合鍵を使って中に入ると、靴はあるのに電気が一切付いていない。 勝手にあがって机を見ると、発情期を抑える為の薬のゴミが置かれてあった。 「……チッ。これ飲んだんかよ。」 薬は、人によって合う合わないがある。 湊と番になる前、ただの友人だった頃に、合わない方だと言っていた気がするが…… 「……湊。」 開きっぱなしの寝室に入り、毛布に包まっている彼の側に座る。 毛布の上から彼に触れ、撫でた。 「……ん、り…く?」 「起こしたか?」 びく、と小さく震えて、湊が毛布から顔を出す。 何でここにいるのか、というような視線を向けられて、思わずため息が出た。 「お前、抑制剤飲んだだろ。」 「ッ……だって、迷惑…かけたく、ないし……」 「迷惑じゃないし、呼べってあれ程言っただろ。」 「………だって。」 番になってから、彼は一気によそよそしくなった。 どこか申し訳なさそうな、辛そうな顔をするようになった。 国に勧められて番にはなったが……俺は、湊だから番になることを許可したのに。 「…だって、国が決めた番なんて、嫌だろ。もしかしたら、陸の運命の番とこの先出会うかもしれないのに。」 「運命の番がいたとしても、俺はお前しか要らない。俺の番はお前だけだから。」 「……でも、」 「でもじゃない。国が勧めたからって、好きでもない奴と番契約なんてするかよ。」 毛布に包まっている湊を抑え込んで、彼に顔を近づける。 柔らかい唇に、自分の唇を押し当てた。 「ッ、!?」 「薬は禁止な。俺の知らんところで飲むんなら、やっぱり家は一緒にすべきだったな。」 「ぁ、え……?」 「お前の体調が治ったら、2人で住むマンション探しに行こうな。」 「り、りく……?」 「ん~?」 何で、という表情をする彼の口を、もう一度塞ぐ。 驚いて目を見開く彼が、ようやくキスしているのだと理解したのか、俺から離れようと藻掻いた。 「…こら、暴れんな。」 「ッッ……」 じっと湊の瞳を見据えると、びくりと震えて固まる。 抵抗しなくなったのをいいことに、彼の口を塞いで唇に舌を這わせた。 「ッ、りッ…んンッッ!ん、んッ…んぅ、ふッッ……」 薄く開いた唇を舐め、舌を口内に侵入させる。 歯茎をなぞり、引っ込む舌を絡めとった。 「んッ、んン゛~ッッ…ぷは、はッ…は、ぁッ……」 「は……」 顔を真っ赤にして、キスで気持ちよくなったのか目をとろりと蕩けさせている。 寝起きだったこともあるのだろう。困ったような顔をして、湊が息を整えた。 「はーッ、ぁ…なん、でッ……」 「何でって。俺ら番なんだぞ?キスぐらいしてもいいだろ。」 「で、ッでも……」 「いい加減、さっさと諦めてくれ。お前はもう、俺のなんだから。」 「ッあ、ッッ……!」 するり、と露出している首筋を撫でる。 俺の噛み痕をなぞるように指を這わすと、ビクビクと瞳を震わせた。 「り、くッ…」 「……なに。」 「お、おれ…なんかで、いいの…?」 「俺は、お前だから番になることを許可したんだ。じゃなきゃ断ってる。」 「……そっか。」 「それに、俺の運命の番はもう別の奴と番契約してるんだぞ?」 「……へッ!?」 驚いて目を見開く湊に、機嫌よく笑う。 「ど、どういう……」 「一応な?運命の番は沢辺なんだけど。アイツ、気づいた時には仲村と番ってたし。」 「あ、そう…なんだ……」 「アイツも、俺がお前の事好きだって気づいてたみたいだからな。」 大学でゼミの後輩として初めて会った時に、沢辺が運命の番だと気が付いた。 だがその時既に俺は湊の事が好きだったし、沢辺は仲村と番契約を終わらせていた。 「だ、大丈夫なのか…?運命の番って、抗えないって聞いたのに……」 「……じゃあ、湊は仲村と二人っきりになっておかしくなるか?」 「へ……?別に何ともならん、けど…何で仲村?」 何ともならないんだったら、恐らく大丈夫だろう。 「じゃあ大丈夫だろ。俺も、沢辺を抱きたいと思った事ないし。」 「陸?何で仲村が出てきたのかって、聞いて「るんだけど。」 「仲村は、お前の運命の番らしいぜ。アイツが言ってたから、確実だと思う。」 「……え。」 俺が湊と番になってすぐ後、仲村から聞いたのだ。 湊と運命の番だと知っていたけど、自分は沢辺が好きだし、湊も先輩が好きみたいだし、と。 だから、俺らが番になってくれて安心したとも言っていた。 「ヒートになったら、仲村に近づいたら駄目だからな?まぁもう家から一人で出ることも無いとは思うけど。」 「わ、分かった。そう、だな。何が起こるか分らんからな。」 「そうそう。」 納得したようで、神妙な表情で湊が頷く。 「納得したんなら、続きやろうか。」 「ん……?何の続き?」 俺の言葉に首を傾げる湊に、苦笑して毛布を剥ぎ取る。 彼の上に覆い被さると、顔を真っ赤にした。 「え、へッッ!?」 「続きって言ったら、続きだろ。」 「ッッ~~!!」 恥ずかしそうに目を逸らす湊の顎を掴み、深いキスを落とした。
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