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No.4「逃げられない」🔞
登場人物名
・受け ミツキ……蜘蛛。
・攻め タカシ……蜂。
「…ほら、ミツキ。食えよ。」
ドサドサと、目の前に人間が落とされる。
それらはとても綺麗な外見をしていて、一目で蝶だと分かった。
「蛾は入ってないら、安心して食っていいぞ。」
「………」
ゆっくり、首を横に振る。
人間を食べたくなんてなくて、目を潤ませて彼を見上げた。
「…ぃ、やだ。くいたく、な……」
「食わなかったら、孕ませて無理矢理言う事聞かせてもいいんだけど。」
「ッッ……」
この世界には、5種類の人間がいる。
普通の何もない人間と、外見が綺麗な蝶と蛾、そしてそれを食らう俺のような蜘蛛と、蜘蛛を孕ませる蜂。
ずっと友人だと思っていた目の前の男は、その蜂だった。
蜘蛛の天敵で、俺らを捕まえて孕ませる、蜂だった。
「ほら、食えよ。美味いんだろ?」
「ッ、う゛……」
俺ら蜘蛛は、蝶を食べる。
蝶はとても魅力的な香りがして、目の前に出されると抗う事ができない。
猛毒である蛾がいないとなると、猶更躊躇することができなかった。
「ッう、ぁ……ごめ、ッ…ごめん、なさぃ…ッッ」
ボロボロと泣きながら、タカシが捕ってきた蝶に触れる。
まだ生暖かく、先程までは生きていたのだと思うとさらに悲しくなった。
蝶の二の腕を掴み、顔を寄せる。
泣きながらも蝶の魅力には叶わなくて、口を大きく開いてその肌に歯を立てた。
ゆっくり、ゆっくりと力を込めていき、噛みちぎる。
普通の食事とは全然違う、美味な肉の味が口内に広がって、気が付けば無我夢中で蝶を食べていた。
部屋や自分の体がが血で汚くなるのも気にせず、肉をひとかけらも残さず。
「……美味かったか?」
タカシの言葉に、ハッとする。
気が付けば先程まで横たわっていた人間は跡形もなく、地面を汚した赤黒い血と、白い骨だけが目の前に転がっていた。
「ッあ、あ……ッッ!うそ、いやだ、ッ…おれ、また…ッッ、ッぉ、え゛……ッッ」
「吐くなよ。」
「ッッ……ぅぷ、んッ…んぐ、ッッ」
また、人間を食べてしまった。元は同じ生物なのに。俺と同じ生き物なのに。また俺は、人を殺してしまった。
気分が悪くなって、思わず吐きそうになる。だが、毎度のごとくタカシに吐くなと脅され、口内に胃酸と共に戻ってきたものを、無理矢理飲み込んだ。
「泣くなって。美味かったんならいいだろ。どうせ、蝶は蜘蛛に食われる運命にあるんだし。」
タカシが、俺の目の前を片付け始める。
骨は拾って袋に入れ、地面にこびりついた黒い血は雑巾で拭いていく。
それを泣きながら見る事しかできなくて、ぼたぼたと床に落ちた涙が、地面の血を濡らして赤く染まっていった。
シャワーを頭から掛けられ、下を向いて目を閉じる。
泣いたせいで腫れた目尻を、タカシが濡れた手で優しく撫でた。
「ほら、体洗ってやるから。」
そう言って、血がこびりついた口や手を洗っていく。
もう、何年もこうやってタカシに体を洗われていた。
世界が特殊な体質を認識し、蝶を食べさせないために蜘蛛を隔離しようとした。
だが蜂がそれに反対し蜘蛛を捕獲し始めてから、タカシが蜂だと知った。
そして、まんまと俺は捕まった。蝶を食べていないのに、気付かれてしまった。
俺はタカシに捕らえられ、孕ませると何度も脅されて、彼が捕ってきた蝶を食べ続けた。
罪悪感で気が狂いそうになりながらも、ずっと。
「……こんくらいでいいか。ほら、ベッド行くぞ。」
全身を洗われ、腸内も洗浄される。
バスタオルで軽く水分を拭き取ると、裸のままで彼に手を引かれて、ベッドまで移動した。
「……するなら、ゴム…」
「チッ、仕方ないな。」
俺の言葉にタカシが舌打ちをして、ゴムを取り出す。
それを彼のモノに付けて、ベッドへと俺を押し倒した。
「いつになったら、孕ましてくれんの?」
「……だって、お前…殺すから。」
「そりゃあな。蜂はいらないんだよ。お前は俺だけのモンだから。蜘蛛とか、蝶とかなら、生かしておいてもいいかもしれんけど。」
一度無理矢理彼に犯され、孕まされた。
子供が腹の中にいる間は、蜘蛛は蜂のいいなりとなる。気が付けば彼の家に監禁されていて、風呂と性行為以外はずっと、鎖のついた首輪を嵌められていた。
そして、生まれた子供は殺された。
俺には判別できないが、蜂だったらしい。
何の迷いもなく赤子を殺す男に恐怖を覚え、そして蝶を食べてしまった俺も同類だと、酷い罪悪感が心を蝕んだ。
「ッ、きすは……んん゛ッ!んぐ、ふッ…んッ、ン゛ッッ!!」
タカシが、俺に顔を近づける。
蜂の体液は、蜘蛛にとっては強力な媚薬だ。
キスは嫌だと何度も言っているのに、タカシは俺の言葉を聞かずに、無理矢理唇を押し当て口内に熱い舌を侵入させてきた。
「ッふ、んッッ…んン゛、ッ…ん゛ー-ッッ!!」
口内に、タカシの唾液が送られてくる。
熱い舌が逃げた俺のものを追いかけ、絡めとり、ジュっと吸った。
互いの唾液がナカで混ざり、口内が一杯になって仕方なくごくりと飲み込む。
……どうせするのだから、自分も気持ちよくなった方がいいだろう。
快楽に溺れた方が、全てを忘れて楽になれる筈だから。
「ッぷは、はッ…はーッッ!」
「ッは……」
俺が唾液を飲んだ事を確認すると、すぐにキスが終わった。
「ッは、はッッ……た、ッ…たかし、ッッ…」
「ん?」
「……はやく。」
ジクジクと、体の内側から熱くなってくる。
眼鏡をつけている筈なのに視界がぼやけ、早く、とタカシに助けを求めるように腕を伸ばした。
「ははっ、もう効いてきたのか?」
「んッ……は、ッ…はッ、ッあつ…からだ、あつッくて、ぇ…ッッ」
飲み込んだ媚薬のせいで、体が熱い。
覆い被さって来たタカシの首に、するりと腕をまわして引き寄せた。
一度彼に孕まされている間に、何をされたのかは知らない。
だが、俺の尻は触れるとすぐに解れるようになっていて、タカシのモノも難なく受け入れるようになっていた。
「ッん、んん゛ッ…ッふ、ふッ…んぁ、ッ…は、ッッ」
タカシがローションを取り出し、俺の尻に塗り込んでいく。
風呂場で軽く解したそこに指が押し込まれ、ローションを塗り込む様にゆっくりとナカの肉壁に触れた。
「ッあ、んッッ…んん、はッ…」
「もう、ナカとろとろだな。そんな解さんくても入りそうだけど……」
「んあ゛ッッ!ひぁ、ッ…そこ、そこッ…」
ナカにあるしこりを掠めたかと思うと、グリグリと指の腹でそこを押し潰される。
媚薬で強制的に快楽に呑みこまれた体は、その刺激で腰を跳ねさせた。
「あッ、あ…ッッ!ひ、んッ…たかし、たかッ…し、ぃッ!」
気持ちが良い。
指で前立腺を刺激され、快楽に耐えるようにぎゅっとタカシに抱き着く。
それに嬉しそうに笑い、指が増やされた。
「ふ、ぁッ…ぁんッ、やッ…んッ、だめ…たりッ、たりな、ぁッッ!」
ぐちゅぐちゅと、ナカでローションが厭らしい音を鳴らす。
二本、三本と増やされた指がバラバラに動き出し、前立腺の周りを刺激した。
直接は触れずに、焦らすかのようにゆっくりと周りをなぞられ、ピクピクと体が震える。
「ッた、たかし、ぃ…ッッ!もッ…さっき、ならしたからッ…はやくッ、はやく、ぅッ!!」
「…いいぜ。じゃあ、入れてやるよ。」
ナカから、タカシの指が抜かれる。
ぎゅうぎゅうと彼に抱き着いたまま刺激を待っていると、暫くして熱いモノが尻穴に触れた。
「ッあ…?」
ぐ、ぐ…とナカに押し込まれる熱いモノ。
そこに違和感を感じて、彼から距離を置こうと腕を離した。
胸元を押して体を離そうとするも、びくともしない。
「ッちょ、まッッ…なんッ、!?」
熱い。ちがう。
いつもと、違う。けれど、知っている熱さだ。
これは、まさか……
「ぅそ、ッ…なッ、なまで…ぇッ!?」
「あ、バレたか。そりゃそうよな。」
「ぃや、ぃやだ、ッ!ぬけよ、ぉ…ッ!!やだ、孕みたくなッ…いやだぁ゛ッッ!」
いつのまに、ゴムを外したのか。
騙されたことに悲しくなり、同時に生で入れられている事に焦りを覚える。
このまま出されてしまったら、簡単に孕んでしまう。
それだけは、嫌なのに。
「抜けって言ったって、ミツキのココぎゅうぎゅうに俺の締め付けてるぜ?本当は、欲しいんじゃないのか?」
「ッッ……ちが、ちがうぅッ!ぬぃてッ…ぬけよ、ぉッッ!!」
抵抗しようとしても、胸元を押す腕ごと抱きしめられてしまい、身動きが取れなくなった。
タカシに言われた通り、俺の腹は彼のモノを離さないとでも言うように、ぎゅうぎゅうと締め付けている。
「やッ…いやッ、ぃやだ、ぁッッ!たのむ、ッ…たのむから、やめてッ…やめろよ、ッッ!」
「…チッ、煩いな。」
「ッ!んぐ、んッ…んむ、ふッ…ふーッッ!!」
煩い、と一言言われたかと思うと、乱暴に唇を塞がれた。
嫌だと首を力なく振るも、すぐに口内に彼の舌が入り込んできて、中を蹂躙する。
「んちゅ、ふッ…んン゛、ッ…んッ、ん゛ー-ッッ」
更に唾液を送られてしまい、飲み込めなくて口の端から溢れる。
ぐちゅ、と彼の舌が口内を這いまわり、送られてくる唾液を混ぜ厭らしい水音が聞こえてきた。
「ん゛ッ、ん゛ーッッ!んぐ、んッ…ふ、んぁ、はッ、はッ……」
媚薬を追加されてしまい、頭の中が霧に包まれたかのように霞む。
抵抗する腕に力が入らなくなっていき、ぐったりと体から力が抜けた。
「はッ、はーッ…ぅ、あ…ッッ」
俺が抵抗できなくなったのをいい事に、タカシは体を離し、俺の腰を掴む。
ベッドの上でぐったりとしている俺の腰を引き寄せ、奥まで彼のモノが押し込まれた。
「ッあ、あ…ッッ!ッや、ぁ…ッ、んッ、ひぁッ…あ、ッふ…んッん゛、ッッ!!」
一度タカシのモノを全て飲み込み、ずるずると抜かれていく。
媚薬で火照った体は抜かれることですら刺激と捉えてしまい、勝手に反応してしまう。
彼の先が抜ける寸前、また奥まで押し込まれた。
「ふ、ぁあ゛ッ…ぁ、ン゛ッ…んぁ、ひッ…ぁ、や…ッ、ぃやッ…んン゛ッ!?」
嫌だと言うと、またキスをされる。
聞きたくないとでも言うように、拒絶の言葉を発する度に彼に唇を塞がれた。
「んッ、ふぁ、あッッ…ひッ、たかし…ぃンッ!ッあ、そこやッ…ひグ、んぁあ゛ッッ!」
彼のモノがナカの肉壁に擦れ、気持ちが良い。
いつもよりナカが熱くて、直で彼の熱が伝わってくる。
「あッ、あッッ…たかし、たッ…たかし、ぃ…ッッ!だめ、きもちッ…きもちぃのッ、だめ、ぇ…ッッ!」
「ッは、あっちぃ……」
ずりずりとナカを擦られて、奥を突かれて。
ローションと彼の先走りでどんどん滑りが良くなって、彼の腰の動きが早くなっていく。
「ふ、ぁッ…こりぇ、ッ…これッへん、ん゛ッ…あつッ、あつ、くてェッ!」
「…やっぱナマの方が気持ちいいわ。熱くて、ミツキのナカがうねるのがめっちゃ分かるし。」
「はッ…はーッ、んぁッ…ぅひ、ッ…!?おッ…おっき、くぅゥ…ッッ!だめ、だめぇッ…なかはだめッッ!」
ナカでタカシのモノが膨張し、ゴリゴリと奥を抉られる。
孕まされる、と直感的に感じて、慌てて力の入らない腕で彼を押した。
「やだッ…!なかはだめ、だめだッて、ぇッッ!!たのむ、たかし!たかッッ、ぅぁあ゛ッ」
頭の中が緊張で真っ白になる。
嫌だ、孕みたくない。
他人の言いなりになんて、なりたくないのに。
「あ゛ッッ、や、おぐッ…おぐッつら、ぁッッ…そこ、ぃやだッ…たッ、たかしぃ゛ッッ!!ォ、あ゛ア゛ッッ!」
「ッハ…出すぜ。ちゃんと、孕めよッッ!」
「ッッ!?ぃや、やだやだッ、やッ…ッあ゛ーー~~~ッッ!!」
ごちゅん、と。
腹の奥底に強い衝撃が走り、視界に白い光が飛ぶ。
チカチカと目の前が点滅し、次の瞬間には腹の奥に熱いものがじんわりと広がった。
「ッぐ……!」
「ぅひ、ッッ…ぁ、あ……ッ!うそ、ぅそッ…いやだ、やだぁ…ッッ」
タカシが、気持ちよさそうな声をあげる。
ドプドプと腹の中に広がったものに蓋をするかのように、根元まで押し込んだまま動こうとはしない。
「ッあ、はなれッ…やだ、はらんじゃ、ッッ…」
「ッはー……チッ、ちゃんと着床してねーな。」
ボロボロと泣きながら、タカシの胸を押す。
孕んでいないと言われ、ホッとしたのも束の間。
すぐにまた彼の腰が動き始め、悲鳴を上げた。
「ゥひッッ!?や、もぉやだ、ぁッッ!ほんとにッ、こどもできちゃ、だめッ…だめッッ!!」
「駄目じゃないだろ。腰、揺れてるぜ。」
「ちが、ッ…ちが、ぁ……ッ!!」
ぐちゅ、ぐじゅっと結合部から溢れた精液が、タカシの動きで泡立ちベッドへと垂れていく。
小刻みに奥をグポグポと突き、彼のモノが俺を孕ませようとしてくる。
嫌々と首を振っても何度も懇願しても、タカシの動きは止まることが無く、俺が孕むまで延々と犯され続けた。
「あー、残念だったなぁ。孵らなかったか……」
突然意識がはっきりとし、ゆっくりと目を瞬かせる。
目の前には俺を監禁しているタカシがいて、俺の体はとても怠く、動かせるような状態じゃない。
……前もこんな風にして意識が戻ったから、分かる。
出産したのだろう。だが聞こえてきたタカシの言葉から察するに、上手くいかなかった。
まず俺が男である上に、蜘蛛の出産は半数しか生きて産まれてこない。
最初の出産が奇跡的だっただけで、二分の一しか可能性は無いのだ。
「また次頑張ろうな。できれば蜘蛛か蝶がいいなぁ。ミツキを取られる心配が無いし。」
「……ぅ゛、ぁ……」
「大丈夫。出産してすぐ抱くようなクズじゃないから。死なせたくないし。……まずは栄養付けなきゃな。ミツキの為に、沢山蝶取ってきたんだぜ。いっぱい食べて、元気なろうな?」
重たい体を抱き上げられて、風呂場へと向かう。
ちらりと見えたカレンダーは、俺の記憶から一年も先だった。
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