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No.9「溶けるまで、」🔞
登場人物名
・受け 蓮(れん)………アイス
・攻め 冬樹(ふゆき)…???
「目の前で人が溶けた」と初めて警察に報告が行ったのは、おおよそ5年前の出来事だった。
そこから同じ現象が多発し、全世界で一大ニュースとなった。
目の前で人が溶けた人は、決まって「相手に想いを告げた瞬間に、溶けていった」と証言している。
「好き」や「愛している」という言葉を発し、両想いになった瞬間に解けてしまうという現象から、解けた人間をアイス、溶かした人間をジュース、と呼ぶようになった。
……それから、人類は人口を数えることは無くなり、愛の言葉を囁くことも無くなった。
一部を除いては。
「…なぁ、冬樹。俺のこと、あいし…ッッ」
パッと口を塞がれる。
最後までいえなかったことに不満を覚えるが、同じように彼も不満そうに俺を見た。
「こら、聞くのも駄目だろ。俺がジュースだったらどうすんだよ。」
「別に俺はいいって。冬樹の言葉で溶けるなら、むしろ嬉しい。」
「俺が嫌なの。蓮を失いたくない。」
その言葉が、俺が聞こうとしていたものの答えになっていると、彼は気づいているのだろうか。
満足げに笑い、側に座っている彼に抱きついた。
「ッわ、ちょ……どうしたんだよ。今日は甘えたい気分?」
「ん。」
冬樹に体重を掛け、べったりとくっつく。
人より体温の低い俺は、恐らくアイスだろうと医者に言われていた。だが、ジュースは見分ける方法がない。
アイスとジュースが結ばれてしまえば、アイスは溶けてしまう。
だから俺たちの関係は、ずっとセフレ止まりだった。
冬樹が、絶対にその先を許してくれなかった。
「……ね、冬樹。そろそろ、しよ?」
「…ん、そうだね。ベッド、行こうか。」
俺たちはセフレだと、無理矢理体に言い訳をして。
絶対に両思いだと分かっているのに、告白することも、されることも許されず。
こうしてホテルで体を重ねるだけの関係を、もう何年も過ごしていた。
死ぬのは、怖い。
だから、本気で人を好きにならないように、ずっと心がけていた。
女でも男でも、体を許したとしても心までは許さなかった。
それなのに、冬樹を好きになってしまってから、全てが変わってしまった。
彼になら、殺されてもいい。
死んでもいいから、好きと言って欲しい。愛してほしい。
俺を殺して、ずっと彼の心を俺で占領したい。
そんな自己中心的な気持ちが、心を占める。
だから何度も懲りずに聞くし、その度に俺が溶けないよう絶対に言葉にしない冬樹に、心の奥底では不満に思っていた。
もしかしたら、本当は好きでも何でもないんじゃないか、と。
彼がそういう性格じゃないことは、もう10年近く一緒にいるから知っている。誠実な彼が好きでもない、しかも男と体を重ねるなんて考えられない。
だが、それでも不安に思ってしまう自分がいる。言葉にされないと、信用できない自分がいる。
だから彼に殺されたかった。
俺が溶けたら、本気で彼が俺の事を好きなのだと、分かるから。
「ンッ、ぁ…ふゆきぃ、あ゛ッ!や、そこッ…そこきもち、ぃッ…」
「んッ…俺も、気持ちいいよ。れん。」
ぐじゅぐじゅと、下半身から水音が鳴る。
俺のナカには冬樹のモノが埋め込まれ、ローションの滑りを借りて何度も奥を突かれていた。
「ッはぁ、ッ!ぁう、あ゛ッッ…ぃくイぐッ、ッや、ぁあア゛ーー~~ッッ!!」
「く、ぅ……ッッ」
ゴツン、と腹の奥を突かれて、目の前がチカチカと白く染まる。
呆気なく射精してしまい、自身の腹を白く汚した。
射精すると同時にナカに押し込まれた冬樹のモノを締め付け、彼が顔を顰めて呻く。
彼も射精したようだが、それがナカで広がることは無かった。
「ッん、ぁ……ッッ!」
ずるりと、冬樹のモノが抜かれる。
ピクピクと抜かれる刺激に体を震わせていると、彼のモノに被さっていたゴムを外し、ゴミ箱へと捨てた。
「ん……ふゆきぃ、きす……」
「蓮、キスは駄目だろ。だって俺たち、セフレなんだから。」
「ッッ……」
言葉とは裏腹に、冬樹が酷く辛そうな顔をする。
キスも駄目なのかと落ち込んだが、彼のその表情に泣きそうになった。
辛い。好きな人とキスすらできないことが辛い。
だが今ここで泣いてしまったら、冬樹はこの行為を止めてしまうだろう。
それは嫌だったから、ごめんと謝って何でもないよう振る舞った。
「ッごめ、そうだったね。…じゃあ、キスはいいから…続き、して?」
「はは、いいよ。」
冬樹がもう一枚ゴムを取り出し、パッケージを開ける。
新しいものを彼のペニスに被せ、俺の尻穴に先を擦り付けた。
「ッん、ん……」
すぐに、彼のモノを受け入れようと尻穴がくぱくぱと開く。
素直な体を冬樹が笑い、彼のモノをぐっとナカへ押し込んだ。
「なぁ、蓮。俺とより戻さないか?」
最近、どこからか視線を感じると思ったら、昔何度か体を許した男に迫られた。
別に好きでもない男だ。ただ、体の相性が良かっただけ。
それなのに付き纏われ、面倒になって顔を顰めた。
「別に、俺お前の事好きじゃないし。今はお前より全然良い相手いるから。」
「…そんなにあの男が好きなんだ?お前、アイスなのに?」
「……そうだよ。アイツになら殺されてもいいくらい、好き。だから、もう俺の事は諦めろ。」
ふうん、と男が理解したのかしていないのか分からない返事をする。
「あんな優しそうで真面目な男を、お前は人殺しにするんだ。」
「ッッ……!」
「可哀想にな。あの男の将来をお前が潰すわけだ。もっと幸せになれる未来があるかもしれないのに。」
何も、言い返せない。
確かにそうだ。結局、俺と冬樹が結ばれたら、彼の目の前で俺は溶けて死ぬ訳可能性が高くて。
冬樹は優しいから、一生罪の意識を抱えて生きるのだろう。誰とも結婚せず、ずっと。
それは俺にとっては幸せな事だが、彼にとっては苦痛でしかない。もっと幸せになれる未来を、俺が捨てさせることになるのだ。
……彼の為を思うなら、俺はいなくなった方が良いのだろうか。
「なぁ、だから俺とより戻そうぜ。俺はお前が好きだけど、お前は俺を本気で好きじゃないんだろ?だったら、溶ける心配もないじゃん。」
「……そう、だね。」
冬樹の幸せを願うなら、その方がいい。
今日の夜会う予定があったが、「もう会えない」と彼に一言送って、男のあとを付いていった。
ドンドンドン、とドアが叩かれる音がする。
強制的に意識が引きずり起こされ、顔を顰めながら上半身を起こした。
ふと時計を見ると、まだ夜の1時だ。
……一体、こんな夜中に誰なんだ。
痛む腰を擦りながら、ずるずると重たい体を引きずるようにして玄関へ向かう。
寝ぼけて少し頭痛もする頭では何も考えられず、チェーンを掛けることも忘れてドアのカギを開いた。
「ッれん!!」
「ッ……ぁ、ふゆ、き……?」
鍵を開けた瞬間に、外からドアが思い切り開かれる。
驚いている間にドアを叩いていた主が家の中へと入ってきて、ぎゅっと俺を抱きしめた。
「な……なん、で…?」
「はー、よかった。急にドタキャンされたら心配になるから、次からはもう少し早めに行ってくれない?」
「ぃや…だって、おれ……も、会えないって……」
もう会えない、とメッセージを送った筈だ。
だからドタキャンどころか、次すら存在しないというのに。
あまり力の入らない腕で、冬樹の体を押す。
どうにか彼の抱擁から逃れようとするも、寝起きという事もあり冬樹の力には敵わなかった。
「……もう会えないって、やっぱりそういう意味なんだ。一応打ち間違いかとも考えたけど。」
「…打ち間違いなんかじゃ、ない。もう、冬樹とは会えない。だから、離して。」
「何で会えないの?他に好きな人でもできた?それとも、溶けるのが怖くなった?」
「ッ、ちが…ッッ!」
どちらも違う。
俺は冬樹が好きだし、彼になら溶かされても良い。
……だが、それだと冬樹が幸せになれないから。
「……ベッドいこうか。話はそれからだね。」
逃げられないようにか、抱きしめられたまま寝室へと移動する。
ベッドに座らされ、俺の顔を覗き込むように彼が屈んで、見上げた。
「それで?あのメッセージはどういう事?」
「………」
「全部白状しないと、今ここで襲っちゃうけど、いいの?」
「ッ……」
そんなことされたら、別の男と寝たことがバレてしまう。
それだけは嫌で、俺と視線を合わせようとしてくる彼に、おずおずと目を合わせて話し始めた。
「……俺は、冬樹が好き。溶けてもいいくらい、大好きだけど。」
「…うん。」
「けど、俺が溶けたら……冬樹、ずっと悔やんで幸せになれないだろうから……」
「……だから、俺から離れようとしたのか?」
こくり、と頷く。
冬樹が幸せになるためには、俺は要らない。むしろ枷にしかならない、邪魔な存在なのだ。
「……それ、誰に言われた?蓮、そんな事考えるタイプじゃなかっただろ。」
「ッッ……!?」
「むしろ自分が死ねば、ずっと俺を縛っていられると思ってただろ。なのに、何で急に意見変えたんだよ。」
冬樹の視線が、鋭くなる。
俺が慌てている間に彼が立ち上がり、肩を掴んでベッドへと押し倒された。
「…もしかして、その男に体触られた?さっきからずっと、怠そうにしてるよな。」
「ッふ、冬樹……?」
「……なぁ、蓮。俺はさ、蓮が思う程優しくないし、心広くないんだよ。」
冬樹の顔が、近づいてくる。
いつもと雰囲気が違う彼に恐怖を覚え、ぎゅっと目を閉じた。
「ッ、ん!?」
唇に、柔らかいものが触れる。
覚えのある感触に何故、と驚いている隙に、冬樹の舌が口内に入り込んできた。
「んッ…ふ、んンッ!ぁむ、んちゅッ…んむ、ッぷは、はッ、はーッ……ぁ、な…なんで、」
「…溶ける前に、俺で塗り替えさせて。」
「ッッ!!」
冬樹が体を離し、ベッドに上がるよう促される。
大人しく従うと、すぐに彼が覆い被さってきて、押し倒された。
「ッあ、ふゆき……ッ」
「ローション、ある?」
「…ん、そこの、チェストに……」
ベッドサイドのチェストを指差すと、冬樹がそこに手を伸ばす。
すぐにローションを見つけ出し、俺の服を脱がし始めた。
「ふ、ふゆき…おれ、ゴムもって、なくて…」
「……体触られた男は、ナマでやったのか?」
「ち、ちが…ッ!そうじゃ、なくて……」
最近は専らされる側だったから、準備していないと言いたかったのだ。
冬樹の事が好きなのに、他の男にそこまで許す訳がない。
「ならいいよ。今日はナマで、な?」
「ッッ~~~!」
ズボンも下着も脱がされ、彼の手にローションが出される。
濡れた手が俺の尻に触れ、指が尻穴へと差し込まれた。
「ッあ、ぁ…ッ!ふゆき、ッッ……」
数時間前まで他の男のモノを咥えていたからか、すぐにナカが緩み始める。
ぐちぐちと彼の指が動く度にローションが厭らしい音を鳴らし、ナカを解していった。
「…チッ、もうこんなに解れて……」
「ッあ、ごめ…ごめん、ッなさ……」
「蓮に怒ってる訳じゃないよ。俺の蓮を誑かして、この体に触った男に怒ってるんだ。」
俺の、なんて。
嬉しくて仕方がないが、今溶ける訳にはいかない。
きっと「俺のセフレ」って言いたかったんだ。そう脳を騙して、彼の動きを待った。
「……もう、入りそうだな。いい?蓮。」
「んッ…いぃ、よ。冬樹で、塗り替えて。」
ぐちゅっと音を立て、指が引き抜かれる。
すぐに彼も服を脱ぎ棄て、腰を掴み、露出したモノを俺の尻穴に押し当てた。
「ッあ……!」
熱い。
まだ触れているだけなのに、冬樹のモノが熱い。
ゴムが無いだけでこうも伝わる熱が違うのかと、これから死ぬかもしれないのにドキドキした。
「…入れるよ。」
「ッ、ん!」
ぐ、ぐ…と冬樹のモノが押し込まれてくる。
ナカが、焼けるように熱い。
今まで感じたことのない熱さに、既にもう溶かされそうだ。
「ぁ、あ…ッ!ッは、ぁ…ッ、あつ…あつぃ、ッ…」
「ッは……ほんとに、熱いな。」
じくじくと彼の熱が直接伝わってきて、脳が痺れる。
それがとても怖くて、冬樹に両腕を伸ばした。
「ッあ、ふゆ、ッ…ふゆき、ぃ…ッッ!!」
「…怖かったら、抱きついてていいよ。」
「んッ!」
彼の首裏に腕をまわし、ぎゅっと抱きつく。
肩に顔を埋め、彼のモノを受け入れようと大きく息を吐いた。
「はーッ、はッ…は、ぁ……ッ」
「ッは……」
ぐちゅん、と冬樹のモノが奥に触れ、彼の動きが止まる。
大きく息を吐いた冬樹のモノが、全て入ったのだと感じた。
「…動くよ、蓮。」
「……んッ、んンッ…ッあ、ァ…ッ、ふゆッき…ぃ、ッ…」
ずりずりと彼のモノが肉壁に擦れ、抜けていく。
かと思うとすぐに奥まで押し込まれ、熱いものが擦れて更に熱を持った。
「ぁッ…ぁアッ、はッ、ぁう…ぅッ、ハ…んッ、はッ……」
「はッ、蓮。れん、ッ…!」
「ッッ、ぅあッ…ふゆ、きぃッ…ぁつぃッ…けど、きッ…きもち、ッ…」
気持ちが良い。
与えられる刺激が、彼の体温が。
俺を満たしてくれ、体だけではなく、心の底から段々と暖かくなる。
「ッは……おれも、きもちいーよ。」
「あ、ほッ…ほんとに…ッ?」
「うん。蓮のナカ、ッは…熱くて、俺の方が溶かされそうだね。」
話をしているからか、ゆっくりとした動きで俺のナカを刺激する。
だがそんな弱い刺激では足りなくて、男に慣れている淫乱な体は、刺激を欲して腰を揺らしてしまう。
「ぁ、う゛ゥ…ッ、ふゆき、ッ…たッ、たりなぃ、から…ッ!」
「ッッ!うん、分かった。蓮は、もっと激しい方が好きだもんね?」
「ッあ゛、ッッーー~~~!!」
掴まれている腰を離され、抜ける寸前で勢いよく奥まで押し込まれる。
ごちゅん、と最奥を突かれ、チカチカと目の前が白く染まった。
「あ゛ッ…ふゆッ、ふゆきぃ、あ゛ッッ!ふかッ…あづい、ィッ!これッ…こりぇつよッ…くて、ェッ!ぎもち、ッッ!!」
「ッは…れん、れんッッ!!」
「ぁぐ、ゥ~~ッッ!ひァッ、あッ…ふゆきッ、きもぢッ…きもちィッ!!」
冬樹の声に、余裕が無くなってくる。
何度も何度も腰を打ち付けられ、ぱちゅん、ぱちゅんと水音が鳴る。
既に俺の足には力が入らず、ただガクガクと痙攣させるだけになっていた。
「ッは…れん、ッ…きもち、いぃ…?」
「ぁう゛ッ…きもちッ…い゛ィ、から、ぁッ!あ゛ッ…だめ、だめッ!そこはいっちゃ……ッガ、あ゛ッッーー~~!」
ごり、と最奥を抉られ、頭が真っ白になる。
もう入らない筈なのに、グリグリとその先へ侵入しようと冬樹のモノが押し込まれ、嫌な音が鳴った。
グポ、と彼の先が奥をこじ開け、全身に強烈な刺激が走り、訳が分からなくなる。
「あ゛ッ…ぁえ゛ッ、ひ、ひッ…!?ぁへ、ッ…ォあ゛アッ!ふッ…ふゆ、きぃ…ぁ゛ッッ!」
「はッ、ッぐ…さすがに、狭いな……」
「ひギッ…まっで、いまうごくな、ッ!だめだめ、イ゛っちゃ、あ゛ーー~~~ッッ!!」
ぐぽ、グポと彼の先が奥へ出し入れされ、何も考えられない。もう、自分の体じゃないようだ。
力は入らず、冬樹にひたすら揺さぶられ、チカチカと意識が飛びそうになる。
「ッ、ぐ……」
「ぁ、ぁあ…ッ、ッあ、ァ……ッッ!」
冬樹がうめき声をあげ、腹の奥に熱いものが広がる。
初めて感じるじんわりとした熱さに、何とも言えない満足感に包まれた。
「はッ…はぁッ、ぁ…あつ、あったか、ぁ……ッ」
「ッッ……」
腹の内側から温められている感覚に、思わず自身の腹に手が伸びる。
自分が吐き出した精液で手が濡れてしまったが、気にせず腹を撫でた。
「……れん。」
「ん、ふゆき……」
ずるり、と抜かれそうになって慌てて片腕で彼に抱き着き、引き留める。
驚いたようだが、俺の気持ちを優先してくれ抜かれることは無かった。
「ふゆき、すき…すきぃ…ッ」
「……俺も。愛してる、蓮。」
「ッッ~~~!!」
ぶわりと、全身が熱くなる。
嬉しくて、幸せで。
彼に愛されているのだと自覚して、ボロボロと涙を流した。
「うぅッ…ひぐ、すきッ!あいしてるッッ!!」
「俺も愛してる。……これで、一生蓮は俺のものだね。」
その言葉は、彼に俺を殺させたという罪を俺に負わせない為の言葉で。
そして、彼の本音のような声色だった。
「ッあ……」
どろりと、体が溶けていく。
矢張り冬樹はジュースだった。アイスとジュースは惹かれ合う運命にあるから、分かっていた。
「…すき。なぁ、冬樹。……キス、して?」
「うん。蓮が溶けきるまで、」
ずっと、と言いながら、俺に顔を寄せる。
冬樹の唇はとても熱くて、触れた場所からまた俺の体が溶けていくようだ。
……段々と、体の感覚が無くなってくる。
熱さも、触れられている感覚すらなくなって、ゆっくりと目を閉じた。
びしゃ、と音を立てて、完全に蓮が溶けてしまう。
蓮だった液体はベッドへと染み込んでいき、跡形もなく消えてしまった。
残ったのは、蓮の黒縁の眼鏡と、ベッドの染みだけ。
「……愛してる、蓮。」
ぼたぼたとベッドへ滴り落ちる透明な液体は、俺の涙か、俺に触れていた蓮の名残りか。
どちらかは分からないが、視界がぼやけてそれすらも見えなくなった。
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