No.12 先輩🔞

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No.12「先輩」🔞 登場人物名 ・受け 奥村 凪(おくむら なぎ)………陽翔の高校時代の後輩。オメガ。 ・攻め 奥村 陽翔(おくむら はると)…凪の高校時代の先輩。アルファ。 ・その他  高山……………………陽翔の親友。オメガ。  吉野……………………凪の上司。アルファ。 俺には、番がいる。 学生の頃に突発的な発情期になってしまった俺は、その場にいた先輩に首を噛まれ、番となってしまった。 まだ俺がオメガだと診断される前で、両者の家族で話し合った結果、先輩が責任を持って俺と結婚すると言い出し、俺が高校を卒業したら籍を入れるという事でその場は収まった。 そして俺は卒業すると同時に本当に籍を入れ、大学まで卒業すると彼が暮らしているアパートに移り住んで、オメガの体質に融通が利く仕事に就職した。 ピロン、と俺の携帯から通知音が鳴る。 画面を開くと、「高山と飲みに行くから遅くなる。」という簡素な一文だけが送られてきていた。 わかりました、と返信をして、画面を閉じる。 「……はぁ。」 スマホをベッドに放り投げ、目を閉じる。 周期的に、そろそろ発情期が来る頃だろう。昨日から体が怠くて、発情期の前兆だろうと思って職場には暫く休むと連絡を入れている。 発情期になるとできるだけ付き添ってくれる先輩に迷惑を掛けないよう、心配する彼にまだ大丈夫だと言ってしまった事が不味かったかもしれない。 こうなるんだったら、朝の内で発情期が来そうだと伝えておけばよかった。 「ッ、くす、り……」 抑制剤を、飲まなくては。 せめて今日は乗り越えないとと思い、重い体を引きずって自分の寝室から抜け出した。 「……凪。」 「ぅ、あ………?」 先輩の声が聞こえてきて、目を開ける。 ぼんやりとした視界の中で、スーツの上着を脱いでネクタイを外す先輩の姿を捉えた。 「やっぱり来たんだな、ヒート。」 薬を飲むために部屋から出た筈だが、その後の記憶がない。 だがいつの間にか先輩の匂いで包まれていて、下を見ると彼の服が散乱していた。 俺は、巣作りをしていたらしい。辺りをゆっくり見渡すと、俺の部屋でもリビングでもない、彼の寝室にいることに気が付く。 「ぁ……ごめ、なさ…」 「謝んなって。ほら、ベッド行こうか。」 先輩に抱き上げられ、彼のベッドへと優しく寝かされる。 うつ伏せになるよう体勢を変えられ、ズボンと下着が脱がされた。 ………彼の匂いとは違う匂いが混ざっていて、とても不快だ。友人と飲みに行くといっていたから、仕方が無いのかもしれないが。 「は、ッ…ハッッ………ぁ、んん、せ…んぱ、」 「するぞ。いいよな?」 「ンッ…」 先輩の言葉に頷くと、背後からカチャカチャとベルトを外すような音が聞こえてきた。 コンドームの袋を破る音も聞こえてきて、暫くすると俺の尻に硬いものが押し当てられる。 「ん、わッ…う゛、うゥ゛……ッッ!」 ゆっくりと、俺のナカに先輩の性器が押し込まれていく。 彼のモノを受け入れる為に、全身から力を抜いた。 俺は、先輩の事が好きだった。 偶然高校の委員会役員が同じになり、サッカー部のエースと言われて校内で男女共に人気があった彼と知り合った。 騒がしいイメージがあったから、静かな図書委員なんて選ぶとは思えなくて。だが彼が自ら志願して図書委員になったと聞き、驚いたものだ。 最初はサボる為に図書委員になったのかとも考えたが、彼は役員の仕事をしっかりとこなし、そして騒ぐこともなかった。 図書館にいる彼は普段からは想像もつかないくらいに静かで、ギャップに惹かれてしまうのも仕方のない事だろう。 いつの間にか俺は彼を視線で追いかけるようになっていて、恋を自覚した。 そんな時。放課後に部活が休みだという彼と二人で図書館で過ごしていると、突然俺の体調が悪くなり始めた。 心配して保健室に連れて行こうとしてくれた彼が俺に触れた次の瞬間、背に痛みが走り地面に押し付けられていて。 そして、大きく目を見開き息を荒くした彼に、首を噛まれて番の契約がされてしまった。 先輩はアルファと診断されたばかりで、俺はまだ性の検査がまだだった。翌年に性別が判別される筈だったが、同級生らよりも体の成長が早かったらしい。 気付いた図書司書に引き剥がされ、そのまま病院へ運ばれて、俺はオメガだと診断された。 「……んん、」 「ああ、起きたんか。体は大丈夫か?」 「…だい、じょうぶ…です。」 先輩は、責任を持って俺と結婚した。 だが彼は一度も俺の顔を見て抱いたことはなく、キスだってしたことが無かった。 ……分かっている。事故で番になった俺なんて、本当は彼にとって邪魔な存在でしかないことは、分かっている。 だが俺は、あの事件のお陰で彼を俺に縛り付ける事ができて内心良かったと思っている。 独りよがりだとは分かっているが、あんな事が無ければ俺は彼とこういう関係になる事なんてあり得なかったから。 「…今日は、早く帰ってくるから。弁当買ってくるから、無理はすんなよ。」 「…は、ぃ……すみませ、」 「だから、謝んなって。今日の昼飯は、冷蔵庫に入ってるから。食えんかったら無理して食わんでいいからな。」 「………はぃ。」 体を起こした俺に、先輩が手を伸ばす。 軽く頭を撫でられ、心地よくてスッと目を細めた。 「…じゃあ、行ってくる。」 「いってらっしゃい、先輩。」 「………」 既にスーツに着替えていた先輩が、じっと俺を見下ろす。 何かおかしなことでも言ったかと疑問に思っていると、彼は何も言わず俺の言葉に頷いてから寝室から出ていった。 暫くすると玄関が閉まる音が聞こえてきて、部屋に静寂が訪れる。 「………はぁ。」 ふと地面を見ると、昨日俺が作ったらしい巣が残されていた。 誘われるようにフラフラとその中に入っていき、蹲って目を閉じる。 彼のベッドからタオルケットを引きずり下ろし頭まで被ると、彼の匂いに包まれて先輩に抱きしめられているような気分になった。 「んん……すき、すき、やぁ……はるとさん、すき……うぅ、ごめんなさぃ……」 彼がいないのを良い事に、気持ちを言葉として吐き出す。 普段はこの気持ちがバレないようにと頑なに「先輩」と呼ぶが、今彼はいない。 ぎゅっと自分の体を抱きしめ、彼の匂いに包まれて再び意識が微睡んでいった。 「高山と飲みに行くから遅くなる。夕飯はいらない。」 昼休憩中に、先輩からそう連絡がきた。 「分かりました。」とだけ返し、スマホを置いて弁当を食べ始める。 彼がよく飲みに行く高山とは、俺も知っている人だ。 学生時代からの先輩の親友で、職場は違えど今もずっと仲良くしているらしい。 俺にも良くしてくれていて、たまに家にも遊びに来る。 「………」 だが彼は、俺と同じオメガだった。 誠実な先輩が彼と体の関係を持っているとは思えないが、それでも別のオメガの匂いをさせて帰ってくる彼は好きになれない。 きっと、あの人は先輩の事が好きなのだろう。………先輩も、きっと。 「……アパート、探さんと。」 「え、なに。なぎ君引っ越すのか?」 「え?あー、声に出てました?」 「バッチリな。」 考えていた事が、声に出てしまっていたらしい。 上司に独り言を拾われてしまい、誤魔化すように笑った。 「いや、ちょっと引っ越し考えてて…」 「ふーん。旦那と?」 「…まぁ。」 「……なぎ君、旦那と何かあったのか?俺で良ければ、相談に乗るけど。」 表情で察してしまったらしい。 心配そうな顔をする上司に、思わずグッと色々な感情が込み上げてきて、泣きそうになった。 「…今日、旦那は?」 「え……あ、えっと。友人と飲みに行くから遅くなる、そうです。」 「そうか、分かった。んじゃ俺らも飲みにいこーぜ。近くの居酒屋でいいよな。」 断る間もなく飲みに行くことが決まってしまい、上司が自分のデスクから立ち上がる。 「じゃあ俺、昼飯買ってくるわ。」 独り身の先輩は料理ができるにも関わらず、たまにしか弁当を持ってこない。 近くのコンビニまで弁当を買いに行くと言って、部屋から出て行ってしまった。 「なぁ、凪君。俺にしない?」 「……え?」 先輩と結婚した経緯やら今日先輩が飲みに行った相手が俺と同じオメガやら、酒のせいか上司に色々と話してしまっていた。 俺の話を真剣に聞いてくれていた上司の突然の言葉に、意味が理解できず凝視する。 「俺は他のオメガと二人きりになったりしないし、こんな風に凪君を悲しませたりなんて絶対にしないよ。……どう?」 「ッッ…ど、どうって……」 どうって、聞かれても。 今まで上司をそういう風に見たことは一度も無かったし、確か先輩は、ベータで…… 「ああ、俺ほ本当はアルファなんだよね。面倒だから、周りにはベータって言ってるけど。」 「あ、え……あ、アルファ、なんすか……」 「そう。番解消すんのは辛いかもしれないけど、俺がずっと傍にいるからさ。俺はなぎ君と番になれなくても、一生大事にするよ。」 確かに、番を解消すると辛いのはオメガだ。アルファはまた新しく番を作れるが、オメガは人生で一度きり。一度解消してしまうと二度と番は作れなくなり、発情期の来る体と一生一人で向き合わないといけなくなる。 本当に先輩と番を解消するのであれば、上司の言う通り誰かが傍にいるととても心強い。 ……でも。 「……ごめん、なさい。今は、そういう事考えられんくて……」 「…まぁ、そうだよな。分かった。俺はいつでも待ってるから、辛くなったら来いよ。」 ポンポンと肩を叩かれ、上司が少し困ったような笑みを浮かべる。 「…そろそろ、お開きにしようか。明日は休みだけど、早く帰らんとだろ?」 「……はい。」 「お前にとって、最善の結果になることを願ってるわ。頑張れよ。」 上司に笑って励まされ、会計を済ませて店から出る。 ほろ酔いのまま上司と別れ、まだ誰もいないだろう家へと帰った。 ガチャリとドアに鍵が刺さって回された音がして、体が跳ねる。 風呂も何もかも終わらせて、後は寝るだけという時間に、先輩が帰ってきた。 「ただいまぁ。」 「ッあ、お…おかえり、なさい。」 酔っているようで、機嫌が良さそうな彼に今日言い出すべきかと一瞬迷ってしまう。 だが上司の言葉を思い出し、自分を奮い立たせた。 「先輩。少し、話があるんすけど…今から、いいっすか?」 「んぁ、話……?まぁ、いいけど。」 不思議そうに首を傾げた先輩が、玄関で靴を脱いで家へ上がってくる。 リビングの椅子に座った俺を見て、彼も目の前に座った。 真剣な話だと俺の雰囲気で分かったのか、彼の表情が強張る。 「……」 「…話って?」 「………あの。お…俺と、俺と……番を解消、してくれませんか。」 「ッッ………!!」 彼の顔が見れない。 視線を合わせずに番を解消してほしいと言った俺に、先輩は息を呑んだ。 「……俺、何か駄目なとこでもあったか?」 「……いえ。」 「お前の気に障る事でも、した?」 「……」 先輩の言葉に、ただ首を振る。 彼は何も悪くない。番になってしまったのは事故だったし、むしろ今まで彼を自由にしなかったのは俺のほうだ。 きっと先輩の運命の番は、彼の親友である高山さんなのに。 「……もしかして、運命の番にでも会った?別のアルファの匂いさせてるけど。」 「っ………は、ぃ…」 嘘だ。きっとその匂いは、一緒に飲んでいた上司に違いない。風呂に入ってもアルファの匂いは消えないのかと驚きつつも、彼と番が解消できるのならと嘘を吐いた。 「…そうか、分かった。」 「ッッ……」 やっぱり、彼にとって俺は邪魔な存在だったのだ。すぐに頷かれてしまい、ぐっと涙をこらえる。 だが、突然先輩が俺に手を伸ばしてきて、俺の手を握った。 「今はヒートじゃないけど、最後に一回だけ、抱かせてくれ。」 「ッッ………!!」 そんな事を言われると思っていなくて、驚いて顔を上げる。 先輩は真剣な眼差しで俺を見つめ、ぎゅっと手に力が籠った。 ……俺にとっても、これが最後になる。 最後にもう一度彼に抱かれて、そして番を解消してもらおう。 そしてようやく、長年俺に縛り付けられていた彼は解放されるのだ。 「………はい。」 「ん、悪いな。」 「……あの、俺…風呂、入ってくるんで。手、離して……」 「……あぁ。」 パッと、手を離される。 先程風呂に入ったばかりだが、準備をする為に巣から立ち上がり、先輩からの視線を感じながらもう一度風呂場へと向かった。 「んッ、んん……ッふ、はぁッ…」 ぐちゅ、ぐちゅっと背後から厭らしい音がする。 普段通り彼に背を向けて、先輩に尻を向けて枕に顔を埋めていた。 だが普段と違うのは、俺が発情期ではないから念入りに彼が解してくれている事だろうか。 それに、全身を普段はされた事が無いような触られ方をして、何だか恥ずかしい。 「はッ…ぁ、ぁう…ンッ、」 「………」 「んひッッ…!?ぁ、あッ…そこ、ッん…んンッ!」 彼の男らしい指が、しこりを撫でる。 ビクンと大きく体が震え、ぎゅっと枕を抱きしめた。 「あッ、あンッ…んぁ、アッ…やだ、そこぉッ!」 「気持ちいいだろ?」 「んい゛ィッッ!ぁ、ッ…あ゛ッッ!やら、ぐりぐりッ、しないで、ぁッ…だめ、だめッ…せんぱ、ぁ…ッッ」 俺の反応を見て、彼が更にしこりを刺激する。 びくん、ビクンと体が何度も大きく震え、ベッドに敷いたバスタオルに俺の性器から先走りが滴り落ちた。 「ぁう、ッ…あ゛ッ、んぁ゛、あッッ…せんぱぃ、せんぱッ…それやら、いやッ…」 「…最後なんだから、好きにさせろ。」 「ッッ……!」 強引な言葉なのに、彼は俺を気持ち良くさせるように指を動かす。 もう尻でしか射精できない俺の体は、むしろ早く彼のモノを入れて欲しいと言うようにヒクヒクと痙攣していた。 「ッう゛ゥ……でも、でもッ…ハぁ、もッ…おく、欲しくて……」 「ッ……そうか。分かった。」 ぐちゅ、と音を立てて、尻から先輩の指が引き抜かれる。 くぱくぱと誘うように尻穴が開閉し、恥ずかしくて枕に顔を埋めると肩を掴まれて体が反転させられた。 「ッッ…?ぁ、なんで……」 「……匂いさせてた奴と、ヤった訳じゃないんだな。ココも解れてなかったし、コッチも元気だし。」 「ッッーー~~~!!そ、そりゃ……するわけ、ないじゃないっすか……」 本当は運命の番でも何でもないから、する訳が無い。 するりと性器を撫で上げられ、ピクピクと体が震えた。視線を合わさないよう、彼から顔を背ける。 「コレ、貰うな。」 「ッあ、や……」 パッと枕を奪われて、彼の腕が俺の腰とベッドの間に押し込まれる。 体を密着させられたかと思うと、強い力で引き上げられて隙間に枕を押し込まれた。 俺の為に枕を入れてくれたのだろうが、顔を隠すものが無くなってしまった。 「…入れるぞ。」 「ッッ……ぁ、あ…?」 体を離して、彼が俺の膝を掴む。 足を開かされて尻穴に硬いモノが押し付けられたが、違和感を感じ視線を落とした。 「ッひ……?!ぁ、まッ…うそ、うそッッ!?」 ゆっくり、彼の性器が俺のナカに押し込まれていく。 だがその先輩の性器には、ゴムがついていなかった。 今まで一度もコンドーム無しでする事は無かったのに、何故か今日は何もつけずに押し込まれている。 ……熱い。彼のモノが、熱い。 「なッ…なんで、なんでッッ……!?」 ナマで入れたりでもしたら、孕んでしまうのに。 そんなことをしたら彼が大変な事になるのにと、慌てる。 だが、嫌だと否定する言葉は出てこない。彼の子を孕む可能性がある事を、嬉しく思ってしまう自分がいる。 俺の中に彼の種が注ぎ込まれる事を想像し、ぎゅっと腹の奥が締まった。 「はは、締まったな。好きでもない男に孕まされるかもしれないってのになぁ?」 「んッ…んンッ!ぁ、あ……ッッ!」 「運命の番がいるのに、俺の子孕んじゃうかもな。」 「ッッーー~~!ぁ、んンッ…あッ、あッッ…!」 奥まで押し込まれた熱いモノが、ズルズルと引き抜かれていく。 だが中途半端に抜けたモノがゴツンと一気に奥を突き、一瞬視界が白く染まった。 「あッ、んぉ゛ッ…あ゛ッ、あ゛ーーッッ!や、まッ…まっで、ちょッ…んア゛ッ!」 「……可哀想にな、なぎ。」 「ッッ……!?」 何度も何度も腰を打ち付けながら、「可哀想」と言われる。 だが彼の表情は全然可哀想と思っているような顔ではなく、むしろ彼の方が辛そうな顔をしていた。 言葉とは裏腹に、まるで孕めといわんばかりに腰を打ち付け、奥を抉るように彼の性器で突き上げられる。 「あッ、ぁンッ…ぅ゛あッ、あ゛ッッ…!せんぱ、ッ…せんぱ、ぁッッ!」 「チッ……最後くらい、名前で呼べよ。先輩、じゃなくて。」 「ッッ……!ぁ、ぁうッ…んん゛、はッ…はると、さッ…あッ、あ゛ッッ!」 名前で呼んで欲しいなんて、今まで言われたことが無い。 学生のころからずっと彼の事は先輩と呼んでいたし、番になってからも、一緒に暮らし始めてからもずっと呼び方は変わらなかった。 何も言われなかったから、これが当たり前だと思っていたのに。 「んぐッ…ぁ、ッあ゛!ぅひッ、ぁンッ…はると、さ…ッッ!はるとさッ…んぁ、ッあ゛…!!」 もしかして、と自惚れの可能性が高いのに考えてしまう。 だって、好きでもない男に態々子供を孕ますような事する筈がないのだ。面倒な事になるだけだから。 それに、俺に興味が無いのなら名前だって態々呼ばせたしないだろう。 もしかして、彼は俺の事が好きなんじゃないか、と。 一度そう考えてしまうと、もうその事しか考えられなくなってしまう。 「ッッ……?」 彼に腕を伸ばし、ぎゅっと抱きつく。 先輩は一瞬驚いたように動きを止めたが、すぐに俺の腰を掴んで体を密着させ、ゆらゆらと奥に押し込んだまま体ごと揺らし始めた。 「あッ、んむぅ~~ッッ!ぁッ、ンッッ…んぅ、んーーッッ!」 「はぁ、ッ……凪、なぎ……ッッ」 「んッ、ンッ…ぁ、はる、はるとしゃッ…それやだ、やだぁッ!だめ、きもちぃッ…おぐきもちッッ!だめだめ、ッ…あかちゃ、できちゃッッ…!!」 「はッ……いいぜ、孕めよ。俺との子産んで、番じゃなくなっても一生俺の事を忘れられなくなればいいんだ。」 ああ、やっぱり。 彼は俺を邪魔だと思っている訳ではなかったのだ。彼の友人の事も、そういう意味で好きではないらしい。 「あッ、あッッ…でる、ッ…はるとさ、でるッ!あッあ゛ッッ…もぉだめ、ん゛ッ、んン゛ーー~~~ッッ!!」 「ッッ、ぐ……は、」 ぐぽ、と奥深くに彼の性器が押し込まれる。 その途端に脳が熱くなり、目の前が真っ白に染まって全身がガクガクと痙攣した。 ナカの締め付けに呻いた彼が、腹の奥に性器を押し込んだまま熱い熱い液体を吐き出す。 「ッは、はーーッッ!はぁッ……ぁ、あ…あつ、あつ、ぅ……」 「は……このまま、本当に孕んじまえばいいのに。」 奥まで性器を押し込んだまま、先輩がそうポツリと呟いた。 本当に孕ませたいようで、彼は俺の中から抜く気配は無く、吐き出された精液が零れないように蓋をされているようにも思える。 「はぁッ…は、ッ…………いい、っすよ…せんぱぃとの、子なら……」 「ッッ…!?でも、運命の番が……」 「そんなの、出会える方が奇跡なんですって。あれはただの上司っすよ。…まぁ、告白はされましたけど、俺は昔からずっと先輩一筋なんで断りました。」 クスッと笑って、彼の首裏から腕を退かす。 もしここまでして彼が俺の事を好きではなかったのなら、それはもう仕方がない。 だが本当に彼が俺の事を好きなのであれば……両想いかもしれないというのに、このチャンスを逃さない訳にはいかないだろう。 ずっと、ずっと彼の事が好きだったのだから。 「…そう、だったのか。だってお前、そんな素振りは一度も……」 「…そりゃ、事故で番になったのに、好きとか言える訳が無いじゃないっすか。俺は先輩の枷にしかなってないのに。」 「っ、そんな事無い!責任を取るって周りに言い訳して、お前を縛ってたのは俺の方だ。俺は、ずっとお前しか………」 先輩が、泣きそうな顔でお前しかいないと呟く。 背に彼の腕がまわり、ぎゅっと苦しいくらい強い力で抱きしめられた。 「……俺以外の男のとこに行く訳じゃ、ないんだな?」 「…先輩が、傍にいて良いって言うんなら。」 「傍にいて。番解消なんて、言わんでくれ。」 縋るように、俺を抱きしめながら弱々しい声でそう言われる。 そんな彼に愛おしさが込み上げてきて、俺も彼の背に腕をまわし、ぎゅっと抱きついた。 「…せんぱい。」 「………」 先輩と呼んでも返事をしない彼に、苦笑する。 「あー、もう。分かりましたって。………陽翔さん。」 「ん。」 名前で呼ぶと、返事をした。 さっきも言っていたように、先輩と呼ばれるよりも名前で呼ばれたかったのだろう。 「…好きですよ、陽翔さん。アンタの子を、俺のここに孕ませて。一生逃げられないように、縛って……?」 「っ……」 「そうしないと、俺また勘違いして逃げるかもしれないですよ。」 「駄目だ。」 逃げる、という言葉を口にした瞬間、彼が俺の言葉を遮るように声をあげる。 必死な彼に段々笑いが込み上げてきて、クスクスと耐えきれずに笑い出した。 「ッくく、あははッッ!必死っすね。」 「……なんだ、悪いか。」 「いーえ、むしろ嬉しいっす。今までずっと、俺の事求めてくれなかったから。」 ようやく俺を求めてくれた、と言うと、先輩__陽翔さんが少し体を離した。 何をするつもりなのかと見守っていると、彼が肘を俺の顔の傍に置き、顔を寄せてくる。 思わず目を閉じると、唇ではなく額に何かがくっついた。 「ッッ……」 「目ぇ、開けて。凪。」 言われるがまま目を開くと、彼が額を合わせて俺の顔を間近で覗き込んでいた。 陽翔さんのまっすぐで真剣な瞳と視線が合い、目を逸らせなくなる。 「…お前も俺の事が好きなんだったら、もう罪悪感とか感じなくていいんだよな?ヒートの時以外にも、こうして愛してもいいんだな?」 「っ……はい。」 「…キスも、いい?」 「ッも……聞かんで、いいっすから。」 聞かないで良いと言うと、陽翔さんが優しく微笑んでキスをする。 初めてのキスだ。目を閉じると、また彼に触れるだけのキスをされた。 「んッ…ん、んッ……」 何度も何度も触れるだけのキスをされて、心が満たされていく。 愛されているのだと自覚し、嬉しくなって陽翔さんに縋りついて、自分からキスを求めた。 「…好きな奴の旦那に会わんといけんって、どんな罰ゲームだよ。」 「……すんません。あの人が何回言っても聞かんくて……」 相談に乗ってくれた上司には、番との誤解が解けた事を報告した。 彼は少し寂しそうにしながらも、俺が幸せなら良かったと言ってくれた。 だが後日、陽翔さんが無茶を言って上司と会わせろと言ってきて、仕事終わりに居酒屋で集まろうと言う事になった。 「おまたせ。そっちが凪がお世話になったって言う人?」 「あ、はい。…あれ、高山さんも一緒なんすね。」 「せやねん、陽翔がどうしてもついてきて欲しいって言うからさ………って、え。もしかして…吉野?」 俺は聞かされていなかったが、陽翔さんは友人である高山さんを連れてきたらしい。俺の上司に気を遣って連れてきたのだろうが、顔を合わせるとすぐに高山さんが大きく目を見開いた。 「やっぱそうだよな!お前高山だろ、久々だな!」 二人は、知り合いだったらしい。上司である吉野さんの目の前に座った高山さんが、嬉しそうに顔を綻ばせた。 吉野さんも嬉しそうな顔をしたが、すぐに眉間に皺を寄せた。 「……なぁ、お前オメガか?」 「何やねん、再会して直ぐにその話?まぁ、オメガやけど。お前は?」 「俺は……アルファだな。」 「チッ、嫌味か。」 ケッと吐き捨てるように毒づいた高山さんが、ふと思い出したように立ち上がった。 「俺、便所行ってくるわ。」 「おー。生ビール注文しとくか?」 「頼む。」 高山さんがトイレに行って見えなくなると、吉野さんも席を立とうとする。 「吉野さん?」 「……アイツ、俺の運命の番だ。スマン、えーっと……奥村さん、でいいのか?」 「あ、はい。奥村です。」 「よろしく。俺ちょっとアイツの様子見てくるわ。駄目そうなら、連れて帰るから。」 吉野さんの言葉に、二人揃って頷く。 高山さんを追いかけるようにしてトイレに行った吉野さんが、暫くすると具合の悪そうな高山さんに肩を貸して出てきた。 俺らが座っている席まで戻ってきて、キッと陽翔さんを睨む。 「一応、コイツ連れてきてくれた事には感謝しておくわ。」 「え?お、おう…」 表情と言葉が一致していない。 流石に陽翔さんも困惑していると、吉野さんが更に口を開いた。 「けど、なぎ君泣かせたら許さないからな。ちゃんと大事にしろよ。」 「分かってる。もう、互いの誤解は解けたし、元々一生大切にするつもりだったし。」 「……なら、いいわ。はぁ……失恋してすぐに運命の番見つかるとか、複雑なんだけど……」 ブツブツと小言を言いながら、吉野さんが高山さんを連れて居酒屋から出ていく。 その背中を眺め、姿が完全に見えなくなると陽翔さんと顔を合わせた。 「……こんな事って、あるんだな。」 「そうっすね……まさか、吉野さんと高山さんが運命の番だったなんて……」 運命の番なんて、見つからずに死ぬ人の方が多い。この地球には80億人もの人間がいるのだ、運命の番なんて、奇跡でも起きない限り見つからないだろう。 「…二人で飲むかぁ。明日、仕事休みだろ?」 「はい。」 「じゃあ……帰ったら、凪と愛し合いたい。いい?」 「ッッ………!!」 陽翔さんの言葉に、まだ一口も酒を飲んでいないのに顔が熱くなる。 そんな反応に彼がクスクスと笑い、そして返事を促してきた。 「なぁ、返事は?」 「ッッ……いい、っすよ……」 「フハハッ。」 俺の返事に嬉しそうにする彼から意識を逸らそうと、運ばれてきたジョッキを手に取る。 中の生ビールを一気にぐびぐびと喉に通して、羞恥心から逃れようとした。 「かわいいな、なぎ。」 「ん゛ッッ……んぐ、げほ、けほッ……な、何すか急に!!」 「いや?今まで言えなかったから、これからは沢山言っていこうと思って。」 生ビールを飲んでいる最中におかしなことを言われ、思わず噎せる。 だが陽翔さんはあっけらかんとして、これから沢山言っていくとまで言われてしまった。 「ッも、つまみ頼みますよ!ほら、さっさと選んでくださいって!!」 「フハハッ、はいはい。」 照れ隠しに彼にメニュー表を押し付け、そしてもう一度ジョッキに口をつける。 苦笑しながらも俺からメニュー表を受け取り、彼が店員の呼んで注文を始めた。
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