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No.1「片思い」🔞
登場人物名
・受け 累……オメガだが優秀な為アルファと思われている、生徒会副会長。
・攻め 圭人…累の友人。アルファで生徒会会長。
高校一年の春。自身の第二の性を調べに、病院を訪れた。
俺の家は代々アルファの家系で、父も母も兄も、家族全員アルファだ。
だが俺は、何もかも完璧にこなす家族とは違って、努力しないと結果が出せなくて。
正直、自身の第二の性を診断するのが不安で仕方がなかった。
「オメガですね。」
「ッッ……」
医者の診断結果を聞いて、俺は酷く絶望した。
これから、発情期のある体と向き合っていかないといけないのかと。もし男に犯されでもしたら、子供を孕んでしまうのかと。
家族に迷惑を掛けてしまうのではないかと、怖くて仕方がない。
オメガだと周りにバレて、冷たい目を向けられるのではないかと、恐怖でいっぱいになった。
オメガはアルファに狙われる可能性がある為、公表する訳にはいかない。
医者によると俺のフェロモンは弱い方らしく、抑制剤を欠かさず飲んでいればバレることは無いそうだ。
だから、俺はオメガである事を隠した。
運がよく今までの努力のお陰で、オメガだとバレることはなかった。
「アルファですか。」という問いには、「じゃあ他に何に見えるんだよ。」と返して。
絶対に頷くことは無く、曖昧な返事をして誤魔化し続けた。
幸い家族は俺の努力を認めてくれていて、元々仲も良かったから蔑まれる事は無かった。
誰にもバレる事なく二年にあがり、俺は友人らと共に生徒会に入った。
生徒会のメンバーは全員アルファだったが、それでも俺がオメガだとはバレなかった。
「累。お前、オメガだろ。」
「……は?…なんだよ、急に。」
生徒会長で友人である圭人が、そんなことを言い出す。
突然の事で、一瞬何を言われたのか理解ができなかった。
既に生徒会室では俺と彼しか残っておらず、すぐに辺りを見渡して誰にも聞かれていないことを確認する。
「匂いが強くなってる。バレる前に薬飲んどけ。持ってるだろ?」
「ッッ……」
読んでいる本から目を離すことも無く、匂いが強くなっていると圭人に指摘される。
……これは、完全にバレているようだ。
元々フェロモンは薄い方で、今まで誰にもバレなかったのに何故彼は気づいたのだろうか。
「……はぁ。分かった。ありがとう、圭人。」
バレる前に薬を飲んでおけと言われて、俺が隠している事も気付かれているのだと知る。
大人しく礼を言い、鞄から薬と水の入った水筒を取り出した。
「…でも、何で分かったんだよ。今まで、誰にもバレてなかったのに……」
「…お前の匂いは薄いから、誰も気づかんだろうな。ただ俺は……」
「……?」
口を噤んでしまった圭人を不思議に思っていると、彼が本から顔を上げて俺に視線を向けた。
「いや、何でもない。」
「そうか?まぁ、いいけど。他の奴にはバレてないよな……?」
「それは大丈夫だと思う。俺以外は、誰も気づいてない。」
「それなら、いいけど……」
アルファの圭人が誰も気づいていないと言うのであれば、大丈夫だろう。
ホッと安堵し、飲んだ薬のゴミを鞄に突っ込んだ。
「…そろそろ帰るか。」
「ん、そうだな。」
生徒会の仕事は既に終わっており、他のメンバーは既に帰っている。
俺は圭人が残って本を読んでいたから、帰るのが名残惜しい気がして一緒に残っていただけだ。
立ち上がった圭人に続いて、俺も椅子を引く。
くらりと一瞬貧血のような眩暈を感じたが、すぐに治まったから気にせずに生徒会室の鍵を取った。
「ッ……」
圭人との帰宅途中。
頭痛を感じ、それが段々と酷くなりだした。視界も少しずつぼやけ始め、くらくらする。
「……大丈夫か?」
「大丈夫…じゃ、ないかも。ちょっと、気分悪くて……」
頭痛や眩暈だけじゃない。体も熱を出したかのように火照りはじめ、危機感を覚える。
おかしい。さっき抑制剤を飲んだ筈なのに、症状は完全に発情期のそれだ。
「…お前の家より、俺の家の方が近い。暫く休んで、親を呼んで迎えに来てもらった方がいい。」
「ッ、けど……ッあ!」
持っていた鞄を簡単に取られて、片腕を圭人の肩に回される。
「ヒートだろ。お前の家までまだ距離があるから、その状態で一人で帰ると危険だぞ。」
「ん……」
段々と頭が回らなくなってきて、言葉の意味も分からずに頷いた。
「ついたぞ。」
「ッふ……は、ぁ…」
「……聞こえてないな、これは。」
圭人の声が、遠くに聞こえる。
だが何を言っているのか分からなくて、返事ができない。
地面に座らされ靴を脱がされるが、一度座ってしまうと自力で立つことは出来なかった。
「ッ……ふ、んッ…ぁ、」
体が、熱い。
皮膚に何かが触れる度に、弱い刺激がピリピリと全身を駆け回る。
いつもは抑制剤で抑えていて、ちゃんとした発情期を初めて迎える。
力が入らなくて、傍に片膝をついた圭人に凭れ掛かった。
「立てそうも無いな。仕方ない、運ぶか……」
腕を掴まれ、ぐっと強く引っ張られて圭人に背負われる。
近づいてきた香りにホッと安堵し、肩に顔を埋めた。
「ん、ん……いぃ、におい……」
「ッッ……無自覚、か。運命の番だって、気付いてないみたいだしな……」
暫くすると、柔らかいものに降ろされた。
俺を寝かせると、圭人が俺から離れていく。
だが、この部屋はいい匂いが充満していて、更に頭がくらくらする。
……駄目だ。この部屋は、ダメだ。
「ちょっと待っとけよ。お前の鞄から携帯を取ってくるから。」
圭人が、部屋から出ていく。
特に強い匂いを放つものが無くなってしまい、寂しくなって匂いが強い物を探した。
玄関に置きっぱなしにしていた累の鞄から、携帯電話を取る。
彼に連絡させようと累のいる自室に戻ると、既に部屋の中は彼のフェロモンが充満していた。
「っ……」
ベッドに降ろした筈の彼が、いない。
部屋を見渡すと、累は俺のタンスから服を大量に引っ張り出し、地面に座り込んで一枚一枚丁寧に並べていた。
「…累。何してるんだ?」
「ん、ぅ……?すぅ、つくってる、よ……?」
「……そうか。」
分かってはいたが、これは……
自分の理性が保てるかどうか、自信が無くなってきた。
「親に連絡できるか?お前の親に、迎えに来てもらおう。」
「ん、や……やだ、」
「…そうは言ってもな。夜には俺の親も帰ってくるし、このままじゃ俺に犯されるぞ。ほら。」
「やだッ!う゛ぅ……まだ、す…つくって、ぅ…から、」
まだ巣を作っている途中だから帰りたくないと、累が駄々を捏ねる。
仕方なく俺が連絡をしようかと思ったが、その前に累が不安そうな顔で俺を見上げた。
「なぁ、けいと、ぉ……おれ、じょーずに、できてる……?」
「あ、ああ……綺麗にできてるで。」
「ふふ、そぅ…?よかった、ぁ……」
ふにゃりと、普段はあまり見ない種類の笑みにぐっと理性を押し留める。
彼を一人で帰す訳にもいかず、外にいたら危険だろうと思って家に連れ帰ったのはいいが……
本人は帰りたがらないし、安心したように蕩けた顔で巣の中心に包まる彼を無理矢理引き剥がす訳にもいかない。
どうしたものか、と頭を悩ませた。
「……取り合えず、ベッドに移動しようか。ほら、そこだと体を痛めるぞ。」
「ん゛……やだ、」
「こら、累。巣は壊さないから安心しろ、そのままにしておくから、な?」
巣から出たがらない累の腕を掴み、引き起こす。
そのまま彼が作った巣の外に引っ張り出すと、不服そうに涙目で俺を睨んだ。
「うぅ……せっかく、つくったのにぃ……」
「悪い。絶対に壊さないから、今はこっちに来てくれないか?」
「ん゛ぅ、ん……いい、におぃ……」
巣から引っ張り出した時は俺を睨んだ癖に、抱きしめるともう機嫌を良くしたらしい。
スリスリと俺より大きな体をすり寄せ、満足そうな顔で肩に顔を埋める。
「ほら、ベッドにあがれ。寝るまで一緒にいてやるから。」
「ん……けいと、」
ベッドにあがるよう言って、彼を座らせる。
体を離して膝裏に腕を入れ、足まで完全にベッドの上にあげた。
「……累?」
「んん…ら、にぃ…?」
「服を離してくれ。流石に少し離れないと俺も理性がトびそうだ。」
「なん、で……いっしょに、いてくれるって……」
俺の服を掴んだ累が、涙目でまた俺を睨む。
ぎゅっと更に服を握る力を強めてしまい、彼の手を掴んで体を離そうとした。
「今のお前は滅茶苦茶可愛いけど……本当に、このままじゃ不味いから。な…?俺に襲われたくなかったら、手を離してくれ。」
「ぃやだ…そば、いてよ、ぉ……」
涙目で好きな人に傍にいてと言われて、離れられる男がいるのだろうか。
諦めて彼の傍に座ると、累がすりすりと寄ってきた。
「は、ぁッ……あたま、くらくらす、ぅ……ッ」
「ッッ……本格的にヒートが始まったか……」
こうなってしまっては、彼の家族を呼ぶのも危険だ。
確か累の家族は皆アルファだと言っていたから、この状態の彼を引き渡すと事故が起きかねない。
仕方なく累の携帯電話を机に置き、ついでに彼の眼鏡も外して机に置いた。
「んん…けいと、ぉ……」
「は……忠告は、したからな。」
一段と強くなったフェロモンに耐えきれず、腰を曲げて彼に顔を近づけた。
「んッ…んむ、ッふ……ん、ンッ…」
「ん……」
累の薄い唇を奪い、舌で濡らす。
彼はぎゅっと目を閉じ、俺のキスを受け入れた。
「ん、ん゛ッ……んぐ、む…んッ、んン゛ッッ!」
唇を割って舌を押し込むと、すぐに彼の口内に入り込んだ。
ピクピクと体を震わせている累の舌を絡めとり、引っ張る。
「んむ、ふ……ンッ、んん゛~~ッッ!んぅ゛、ン゛ッッ!」
ぐちゅぐちゅと互いの唾液が混ざり、厭らしい水音を立てる。
息ができていないのか、累が苦しそうに俺の胸を叩いた。
「ん゛ーーッ!…ぷは、はッ…ハぁ、はッッ……」
「は……ふははっ。キス、苦しかったのか?」
「はッ…ぅ、く…るしッ……けど、きもちぃ……ッッ」
「初めてなんだな。……可愛い。」
息の仕方も分からない累に、クスクスと笑う。
初々しい反応に初めてなのだと気付き、満足げに彼を見下ろした。
「ハァ、はッ……ぁ、けぃ、と……ッ」
「……脱がすぞ。」
「ンッ……」
制服のネクタイをしゅるりと引き抜き、ワイシャツのボタンを一つずつ丁寧に外していく。
ベルトも引き抜いて地面に落とすと、累がぶるりと体を震わせた。
「は、ッ…ぅ、さむ……ッッ」
「すぐ暑くなる。」
火照った体に、部屋の中とはいえ外気が触れて寒いのだろう。
だがどうせすぐに暑くなるだろうと、気にせず彼の服を脱がしていった。
「……エロいな、累。」
「ッん……んぅ、ッ?」
彼の服を全て脱がすと、自分の服もさっさと脱ぎ捨てる。
まだ番にもなっていないし、俺らは学生だ。孕ませてしまってはいけないと、コンドームを自身の性器に覆い被せた。
「触るぞ。」
「ん、んッ……ん、ふ…ぅ、う゛……くす、ぐったぁ……ッッ」
彼の全身に、唇を押しあてていく。
首筋、鎖骨、胸…とどんどん降りていき、膝裏を掴んで足を開いた。
現れた柔らかそうな内腿にキスをし、口を大きく開いて緩く噛む。
「んひ、ッ……ぁ、あッ…やら、かまなッ…で、ぇッ……」
嫌々と首を横に振るが、既に累の性器は反り起ち、先走りをトロトロと垂らしている。
どんどん強くなっていくフェロモンに、僅かに残った理性が搔き消えてしまいそうだ。
「……累。」
「ッあ、ひ…ッ!ぁ、やッ…そこは、さわんなッで、ェ……ッッ」
ローションを彼の尻穴に垂らし、指を這わす。
ぐっと中指を彼の尻穴に押し込むと、オメガだからかナカはすでにぐしょぐしょに濡れていた。
指で慣らさなくとも、すぐに入りそうだ。
「…累、入れてええか?」
「ふ、ぁッ…けぃとッ…けいとぉッ…!」
何度も俺の名前を呼ぶ彼に、肯定と捉え指を引き抜く。
それだけでビクビクと体を震わせる彼が愛おしくて、クスクスと笑って累の膝を掴み割開いた。
「ッひ、ぁ…あッ!あつ、ふとッ…ふとぉ…ッッ!」
ゴムを被った自分の性器を、累の尻穴に押し当てる。
ゆっくり、ゆっくりと押し込んでいくと、累がぎゅっと目を閉じて体を縮こませた。
「ぅあ、あッ…ひぅ、くるし…ッ、けいと…くるしッ……」
「ッ……は、累。」
「んッ、ん゛ぅ~~ッッ!ぁ、あッ…ん、ひ…ひィッ…!!」
ごちゅん、と俺の性器が全て入る。
累の足を広げたまま体を寄せ、ぎゅっと目を閉じている彼の唇を奪った。
「ンッ……ぁ、あ……ッ」
「ぜんぶ、入ったぞ。」
「ん、ンッ…ふ、んッッ……」
何度も、触れるだけのキスをする。
彼のナカはとても熱く、俺の性器を奥へ引き入れるようにぎゅっと締まった。
「ッッ…ふはは、凄いな……もう、気持ちよさそうに俺のを締め付けて。」
「んッ…んぅ、ぁ…あッ…ッふ、フーッッ…ハぁ、ンッッ!」
「…もう少し、そのまま動かないでおこうか。お前が慣れるまで、な。」
累の体が俺の大きさに慣れるまで、動かないでおこうと提案する。
既に彼には聞こえていないだろうが、累の膝裏から手を離し、顔の側に肘を置いて彼を抱きしめた。
ローションで濡れていない方の手で、彼の¥黒髪を撫でる。
「はッ…ぅ、ンッ……はぁ、はッ…ぁう、けぃ、とッ……」
「ん?」
「はァ、ハッ……ぁ、うぅ゛~~ッッ!もッ…もぉ、うごいてッ…おぐ、おくッ…うずうず、してんのに、ぃッッ!!」
最後の理性を振り絞って、彼が慣れるまで待とうと思ったのに。
熱に浮かされた累が、足を俺の腰に回してぎゅっと引き寄せる。
俺の首裏に両腕を伸ばし、強く抱きしめられた。
「ッッ……たく、お前は……さっきから、俺の努力を全部無駄にさせやがって。」
「ん、あ゛ッッ!ひ、ひィ゛ッ…つよ、ッ…ふかぁ゛ッッ……!!」
折角、彼の為を思って必死に繋ぎとめていた理性を投げ捨てる。
ズルズルと奥まで入っていた性器をギリギリまで引き抜き、次の瞬間には腹の奥まで一気に突き上げた。
累が大きな声で喘ぎ、ぎゅっと腕の力を強める。
「んぎ、ッ…ぅあ、あ゛ッ…ふかッ…ふがい、ぃ゛ッッ!」
「ッ、おまえの、せいだろうが…ッッ」
「あ゛ッ、ゥあ゛ッッ…んぐ、ひィ゛ッ…んぐぅッ、けぃと、ッ…けいとぉ、ンッ…!」
ゴツゴツと、累の奥を勢いよく何度も突く。
彼は俺に抱きついて、気持ち良さげに腰を揺らしていた。
「ハッ、腰揺れてるぞ。」
「んぃ゛ッ…やッ、だッて、ぇッッ……!きもちぃ、ぎもちッ…けぃ、けいとッッ!んぁ゛、あ゛ーーッッ!ヒぃ、ひッ…んぉ゛、あ゛ッ…う゛ーッッ、ん゛ッ…ん゛ッッ!」
ゆらゆらと腰を揺らしながら、累が耳元で声を抑えることなく喘ぐ。
彼の声が直接響いて、更に興奮して性器に血が集まった。
「お゛ッ…おぐ、おぐぅッ!だめ、やばぃッ…やばい、ぃッ…きもちぃ、おぐッ…ごちゅ、ごちゅッで、ぇ…ッッ!おがし、あだま゛ッ…おがじぐッ…」
「ははッ、俺に抱かれて気持ち良くなってるんだな?累。」
「んぅ゛、ン゛ーーッッ!ぁ、あッ…ぎもぢッ、きもちぃ゛ッ…けいッ、けいと、ォ゛ッッ!!」
ぎゅうぎゅうと彼のナカが俺の性器を締め付け、奥へ奥へと誘ってくる。
何度も腰を打ち付けていると、ふと彼の赤く火照った首筋が視界に入った。
「ッッ、ぐ……」
慌てて、下唇を噛む。
駄目だ。累の許可もなく彼の首筋を噛みそうになってしまった。
一気に理性が戻ってきて、自分を落ち着かせようと必死になる。
「は、ッ…はァ、あ゛ッ…んぅ、けいとッ…けいとぉ、ッッ…!きす、きすしへッ…」
「ッ…ふは、気に入ったのか?」
「ん、ッ…んむ、ちゅッ…ッふ、ん゛、んぐッ…」
キスを強請る累に、意識を逸らすには丁度良いと彼の唇を奪う。
舌を突き出して必死に俺からのキスに応えようとする彼が、愛おしい。
じゅる、ぐちゅっと厭らしい音を鳴らしながらキスをして、唇が離れると銀色の糸が紡がれる。
それが切れる間もなく、再び唇を押し付けて何度も何度もキスをした。
「んん゛ッ、ンッ…ふ、ふッ…んむ、ぅ…ッッ!ン゛ッ……ぷは、ハぁッ…は、ぁッ…んん、けぃとッ…」
「ッは……ん、なんだ?」
「う゛ぅ、すきッ…すき、ぃッ…けいとッ、すき、ぃッッ!」
「フッ……おれも、好きだぞ。」
何度も俺の名前を呼びながら、好きだと必死に伝えようとしてくる。
彼が俺に好意を向けている事は前々から知っていたが、ちゃんと言われるとこんなに嬉しいものなのかと心が満たされた。
下からの刺激に喘ぎながら、俺の返事に累がへにゃりと笑う。
「は、ッ…ほんッ、とぉ?うれし、ッ…うれしぃッッ!」
「ふはは、可愛いな。……次のヒートの時にでも、番になろうか。」
「んぁ、あ゛ッ…ら、んでッ…やだ、やだぁッッ!」
「ッッ……?」
番になることが嫌なのかと、不安に思って彼の顔を覗き込む。
だが累は泣きそうな顔で嫌々と首を振って、喘ぎながら必死に言葉を紡いだ。
「ぃまッ…いまがいぃッ、はやく、けいとッ…はやぐ、ぅッッ!!」
「ッッ……ハッ、いいんだな?」
「んッ、ぅんッ!はやく、かんれッ…けぃと、けいとぉッッ!!」
早く噛んで、と累に急かされ、彼の首筋に顔を寄せる。
スーッと累のフェロモンを大きく吸い込み、唇を首筋に押し当てた。
「ンッ……ぁ、あ……ッッ!んンッ……けいとッ、ぉれッ…けいとの、ッ…けいとッの、つがぃにッ…」
「…本当に、いいんだな?」
「んッ…はやく、はやく、ぅッ!はやく、かんれッ……!!」
ピクピクと体を震わせる累の首筋に、歯を突き立てる。
累の体がぶるりと大きく震え、ぎゅっと強く目を閉じた。
「んぃ゛、あ、ッ…あ゛ーー~~~ッッ!!」
ガリッと強く彼の首筋に歯を食い込ませると、途端に累が大きな声で喘ぐ。
悲鳴に近い嬌声をあげ、ぎゅうぎゅうと俺の性器を強く締め付けた。
「ッ、ぐ……ぅ、ッッ!」
首筋を噛むと同時に、累の性器から白い液体がぷしゃぷしゃと健康的な色の肌に飛び散る。
同時に俺もゴムの中に射精し、破れてしまう前にずるりと彼のナカから引き抜いた。
「はーッッ、はぁ…はッ、はッッ……ぁ、んで…ぇッ?」
「ン?」
「うぅ゛、んッ……おなか、さびし…ッ」
腹のナカが寂しいと言う累に、グッと流されそうになるのを押し留め、我慢する。
「…駄目だ。これ以上したら本当に孕ませたくなるだろ。……卒業したら、腹いっぱいになるまで注いでやるから。」
「ぁ…そ、か……」
息を整えてる間に、疲れたのか累がうとうとと微睡み始める。
その傍でベッドの端に座り込み、コンドームを取ってゴミ箱へと捨てた。
「寝てていいぞ。体は拭いておくから。」
「…ぅ、ん……」
完全に目を閉じて寝息を立てはじめた彼を確認し、汗で張り付いた前髪を退かす。
顔を寄せて触れるだけのキスを落とし、彼の体を拭く為にタオルを取ってこようと立ち上がった。
目を覚ますと、目の前に見慣れた茶髪が見えた。
「ッッ……!?」
驚いて身じろぐも、背に腕がまわされ抱きしめられているようで、身動きが取れない。
服を着ていない事に気が付き、彼との行為を思い出して顔に熱が集まる。
「……ん、るい…?」
「ッあ、お…おはよう、けいと。」
「おはよう。フハッ…顔、真っ赤だぞ。」
素肌が密着していることも恥ずかしいし、行為中に何度も彼に好きだと言ってしまった気がして恥ずかしい。
指摘されて彼から視線を逸らすと、圭人が心配するように俺の顔を覗き込んできた。
「体は大丈夫か?」
「ん…ちょっと、怠いかも……」
「そうか。今日は土曜だから、暫く休んでいけ。帰りは俺が送るから。」
俺の背に回っていた手が、後頭部を優しく撫でる。
それが気持ち良くて、思わず彼に身を任せた。
「ああ、そうだ。お前の家族から、心配する電話が掛かってきていたから、折り返してやれよ。」
「ぁ……分かった。」
圭人が起き上がり、ベッドから降りる。
下はちゃんと穿いていたらしく、地面に落ちていた服を拾い上げて羽織った。
俺の側から離れていく圭人に無意識に手を伸ばしてしまい、慌てて引っ込める。
だが彼に気づかれてしまって、圭人が軽く笑って俺の頭を撫でた。
「朝飯準備してくるから。食えないものは無かったよな?」
「ぁ、おう。」
「すぐ戻ってくるから、お前は親に連絡しとけ。」
渡された眼鏡とスマホを受け取り、彼の言葉に頷く。
部屋から出ていく圭人を見送り、ドアが閉まると手元にある携帯電話の着信履歴を確認した。
「…うわ。」
そこには家族からの大量の着信履歴が残っており、心配させてしまって申し訳なく思う。
取り合えず一番上にあった母親に電話を折り返すと、すぐに取った。
「おはよう、体は大丈夫?」
「え?お、おう。一応……ごめん、心配かけて。」
案外落ち着いた声色に、拍子抜けする。
もっと慌てると思っていたが、母親の声色は至って平穏だ。
「ほんと、無事で良かったわ。圭人君だったかしら、アンタがよく言ってた子でしょ?礼儀正しい子ね。」
「え……なんで、知って…」
「昨日、累が眠って電話取れないからって彼が電話取ってくれたのよ。」
なぜ母親が圭人の家にいることを知っているのかと思ったが、彼が連絡を返していてくれたらしい。
「挨拶に来るって言ってたから、お父さんも喜んでるわよ。」
「え゛ッ……も、もしかして、圭人から聞いて……」
「アンタも合意の上で番になったんでしょ?」
「…まぁ、合意というか…俺が強請った、というか……」
次の発情期に番になろうという彼に、俺が今すぐ番になりたいと強請ったのだ。
圭人はそんな俺の我儘に、嬉しそうに笑って応えてくれた。
「…片思いの、相手だったんだよ。でも、アイツも好きって言ってくれて……」
「じゃあ良かったじゃない。できるだけ早く紹介してね。」
「…ん。じゃあ、また後で。」
家まで負ってくれると言っていたから、もしかしたらそのまま俺の親に挨拶するつもりなのかもしれない。
また後でと言って電話を切り、携帯電話をベッドに投げ出すと同時に部屋のドアが開いた。
「朝飯、できたぞ。電話は終わったか?」
「ん、終わった。連絡してくれてたんだって?ありがとな。」
俺がいるベッドまで歩み寄ると、圭人が傍に座る。
彼の手が俺に伸びてきて、何をするのかと見守っていると後頭部に手がまわされた。
「ん……」
何度か髪を梳くように撫でたかと思うと、その手が首筋へと移動する。
「ッ、ん……け、けいと……」
ピクッと、体を震わせる。
彼が撫でた場所は、昨日つけられた噛み痕だった。
「番になったら、他の人にフェロモンの匂いはしなくなる。お前も、オメガだって隠したかったんだろ?」
「…ん、そうだけど……」
「……片思いの相手、だって?」
「ッえ゛、聞いてたのかよ!?…盗み聞きは趣味悪いって。」
聞かれていた事に恥ずかしくなり、誤魔化すように彼を睨む。
だが照れ隠しだと分かっているのか、圭人がクスクスと笑って俺の片手を絡めとった。
「……俺も、お前の事が好きだった。お前は気づいてなかったみたいだけど、運命の番なんだぞ?気付いた時は、本当に嬉しかった。」
「ッッ……!え、そうなのか!?あ…でも確かに、いつもとヒートの感じが違って……」
抑制剤を飲んだ筈なのに、効かなかった。
それに、彼の傍でとてもいい匂いがした覚えがある。頭がクラクラするような、強く惹かれる匂いが。
「…そう、なんだ。俺ら、運命の……」
「ああ、そうだ。」
首筋を撫でていた手が、再び後頭部へと回される。
ぐいっと引き寄せられ、抵抗することも無く彼の胸に凭れ掛かる。
「…好きだぞ、累。」
「……俺も。」
折角掛けた眼鏡が、彼に奪われる。
それを傍の机に置かれ、ゆっくりと目を閉じた。
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