【平坂 大】01:高い空へと手を伸ばす

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【平坂 大】01:高い空へと手を伸ばす

 手を、伸ばした。  高い高い、そして、遠いあの空へと手を伸ばしたんだ。  だけど、空はやっぱり遠くてちっぽけな俺の手じゃ届かない。  俺はあそこに行きたいのにあの空はとても遠いんだ。  俺は、平坂 大。  つい最近までは高一だった。  そう、つい最近まで。  こんな言い方をすると、俺が高校を辞めたって誤解されそうだけど違う。  誰も信じてくれないだろうなぁ。  実はさ、俺、死んでるんだ。  変わらない毎日だった。  真面目に学校行く日もあれば、たまにサボったり、家にいても勉強なんてしないで遊んでばかりいた。  それでよく、母さんに怒られたっけな。  ちゃんと勉強しなさい! ちゃんと学校行きなさいっ! ってさ。  遊ぶときは仲間と一緒だったんだけどさ。  どこか物足りなかった。  いや、楽しかったよ?  けど、なんか違うなってずっと思ってた。  でも、一番それを感じたのは学校だった。  校内でタバコ吸ったり、酒飲んだり。  先生から逃げ回ったりして、最初の内は楽しめた。  でも、だんだん俺みたいな問題児なんて相手にするのも無駄って顔して先生も相手にしてくれなくなった。  そこでやめときゃ良いのにな。  自分でも虚しくなっていってるのが分かってたのにどうしてだろんな。  やめられなかったんだ。  そんなある日、俺はぶらぶらっと散歩なんてしてたんだ。  まぁ、ぶらぶら散歩なんていつものことなんだけどさ。  それでさ、その途中でスピード違反かなんかの車にぶつかって即死……だったんだろうな。  一瞬さ。意識が遠のいて何が起きたのか分からなかったよ。  気がついたらぷかぷか空中に浮いてたんだ。  下を見たら俺が血を流して倒れてて、たくさん人が集まってきてた。  あれ? でも、俺はここにいるよな。  じゃあ、あれは誰だ?  どう見ても俺だ。  あぁ、俺、死んだのか。  そっか、死んだのか。  その次に、思ったんだ。  ああ……生きてたときとあんま変わんないじゃん、って。  あれから、多分、一週間くらい。  町の中をぶらぶらと散歩してる。  死ぬ前みたいに。  それで時々、こうやって腕を伸ばして手のひらを空に向けて、 「神様ぁっ! 俺、なんか悪いことしましたかぁっ!?」  なんて呼びかけるけど反応なんてあるわけない。  分かってるのにこんな風に叫んでる自分がバカみたいで笑いそうになる。  でも、ほら、死んじゃったらあの高いお空の上にあるかもしれない天国に行くってのが定番だろ?  だから、ほんの少しだけ期待してたんだけどなぁ。  やっぱり神様なんていねぇのかなぁ。  テレビとかでやってた死後の世界ってのも嘘っぱちなんだろうか。  その内、俺なんて消えちゃうのかもしれないな。  死んだら無になるって説もあるじゃん?  だったら、それでも良いから早くしてくれって感じだ。  俺は、すたっと地面に降りた。  っていっても、地に足ついた感触なんてさっぱりないんだけどな。  そして、一呼吸おいて息を大きく吸って、今までで一番大きいんじゃないかって声量で叫んだ。 「空ぁあああああっ!!」  半分やけくそだ。  けどさ、こんだけ大きい声で叫んでるのに何の反応もなし。  なかなか来ない空からのお迎えに呆れてるのか、自分に呆れてるのか小さなため息が出た。  その時、 「何?」  思い切り不機嫌そうな女の子の声がして。  え……?
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