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【平坂 大】08:今更、恋なんて
生きたい? なんだよ、それ。
バカだな、俺は。本当にバカだ。
今になって"生きたい"とか思ったって意味ないっつーの。
死んでから……死んでから、そんなこと思ったって無駄なんだよ。
何だか俺ってマジで情けないよなぁ。
好きな子の頭を撫でることもできない。
…………あれ。
俺、今、何て思った?
好きな、子?
あぁ、俺、いつの間にか空のことを好きになってたんだ。
誰も見つけてくれなかった俺を見つけてくれた。
それだけ。たったそれだけのことが俺にはすごく特別なことで。
今まで誰かを好きになったことなんてなかった。
それなのに。
なんで今更、恋なんてしてるんだよ。
あぁ、もう。俺のバカ野郎。
死んでから"生きたい"とか思ったり、
死んでから"恋"とかしたり、
そんな無駄なことしてどうすんだよ。
意味ないんだよ。
遅いんだよ。
情けない。
泣きそうになる。
でも、泣いたってどうにもならないだろ。
そうやって自分に言い聞かせる。
「良い天気だなぁ」
意味もなく呟いてみた。
俺の心の空模様とは違って憎たらしいくらい綺麗な青で。
俺みたいなのが太陽の下にいるなんて場違いだって。
そんなことを言われてるような気になる。
このまま俺が消えたら空はなんて思うかな。
寂しいとか思ってくれるかな?
辛いとか悲しいとか。
それとも俺のことなんて全く気にしてなかったり。
だって出会ってから二週間も経ってない。
俺と出会った日のことなんて忘れちゃうんだろうな。
いつか俺のことなんて忘れちゃうんだろうな。
悔しい。すげぇ悔しい。
唇を噛み締めて空を仰いでいたら、
なんでか急に身体が軽くなったような気がした。
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