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【平坂 大】09:さよなら、空。
体がすっと軽くなって意識もだんだん薄れてく。
今更すぎて悲しくなってくるけど消えるのが怖い。
空に会う前はあんなに消えたがったのにな。
天国に行きたいとか天国がないんなら別に消えちゃっても良いやとか、そんなことばっかり考えてたのに、今はこんなに、消えるのが怖いんだ。
『生きてるのも死んでるのも変わらない』
こうして実際に死んでみて思ったこと。
なんだよ、全然、違うじゃん。
消えていく恐怖。
見つけたばかりの大切な人。
生きたいって思える理由。
せっかく、せっかく見つけたのに。
もうすぐ失ってしまう。
どうせなら生きてるうちに会いたかった。
「……本当、俺ってバカみたいだよな」
ああ、違うな。みたいじゃなくて、バカだ。
俺、今から消えます。多分。
あの高い空にでも吸い込まれていくのかな。
「バイバイ、空」
もう少しだけ。
もう少しだけ。
縋るように。
「……空、バイバイ」
声を出す。
こんなんじゃ空に届かない。
「空、っ……さよ、なら」
あの高くて青い空か。
俺が今、本当に側にいたいと思う空。
どっちにさよならを言ってるんだろ。
自分でもよく分からない。
急に悔しくなって、
「空の、バカヤロォッ!」
って衝動のまま叫んだ。
青い空の方に。
「バカで……、悪かったわね……、あぁッ! もう疲れたッ!」
あれ。なんだか懐かしい展開だ。
って。
え、……そ、空?
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