そして、時夫の時が動き出す

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 シロちゃんに会いたい。  何年何ヶ月何日の何時間が経過しようと、僕の願いはただそれだけだ。いつも同じようなことばかり願っているから、過去と現在、そして未来の区別さえ付かなくなってしまった。  だから、僕は想像できなかったんだよね。  この生温い空間に、突然知らない大人のお姉さんがやってくることを。  それが、僕よりずっと大人になったシロちゃんだと知るのに時間が掛かってしまった。  大人になったシロちゃんは、昔よりも手足が細長くなった。僕の背丈までは行かなくとも明らかに背が伸びていた。昔と同じく体型はほっそりしていたけど、胸のあたりが風船のように大きく膨らんでいてびっくりしてしまった。  綺麗に化粧を施したその顔は、まさに大人のお姉さんだった。でも、その顔は間違いなくシロちゃんそのものだった。僕にはわかるんだ。大人のシロちゃんが通行人に紛れていても、見つけ出せる自信はあるから。 「シロちゃん」  僕があんぐりと口を開けたまま名前を呟くと、シロちゃんは柔らかく微笑んだ。 「久しぶりだね、時夫」
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