そして、時夫の時が動き出す

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 僕とシロちゃんはずっといろんな世界を冒険してきた。それも、みんなが聞いたら驚き呆れるような、不思議な世界ばかりさ。  炎の魔人が支配する世界では2人して丸焦げにされそうだったし、巨人や巨大生物が闊歩する世界では2人して踏み潰されそうになった。  おまけに死者の世界では死神に追い回された。これだけ聞いてしまえば過酷な冒険だと思うよね。  でも、良いことだってたくさんあったんだよ。星の女神が御座す世界を訪れれば、大きくて美しい星空が見えた。不死身の怪物が棲まう世界を訪れると美味しい南国の果物をご馳走になった。  冒険が始まる時、2人ではしゃいで踊り出したこと。冒険への期待とは裏腹に厳しい現実を見せ付けられて、冒険に出るんじゃなかったって後悔したこと。それでも2人で乗り越えて、生き抜いた喜びを分かち合ったこと。  僕は10年経った今でも、シロちゃんとの冒険の日々をずっと忘れていない。決して忘れるつもりはない。  それなのに、シロちゃんは忘れてしまったみたいだ。  最後にシロちゃんと別れる前に、彼女は冒険ができなくなると言い出したんだから。
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