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僕は一瞬何を言われたのか、さっぱりわからなかった。シロちゃんの言った一言が僕の脳内に浸透するまでに数分が経過した。
もう、冒険ができない。一体何の冗談なんだろう?
「シロちゃん、それって……」
どういうこと? 僕は最後まで言い切ることができなかった。それくらいこの言葉が信じられなかったんだ。
涙で濡れた彼女の頬は、桃色に染まっていた。俯き加減だった彼女の瞳に新しい雫が溜まっている。もし、僕がひどいことをもう一度言ったのなら、目から溢れてしまいそうだ。だから、シロちゃんを責められなかった。
シロちゃんは言ったんだ。シロちゃんのお父さんとお母さんが、僕たちの冒険に反対したらしい。娘には良い学校に行って、良い仕事を見つけてほしいんだって。
僕はシロちゃんのお父さんとお母さんが嫌いだった。どうして、子供が本当にやりたいことをさせてくれないんだろう。どうして良い大学、良い仕事が優先なんだろう。シロちゃんが本当にやりたいのは冒険なのに!
そんなの反対して、シロちゃんはシロちゃんのやりたいことをやればいい。僕はそう言おうと思ったんだ。
でも、そんなこと言えなかった。だって、シロちゃんはお父さんとお母さんのことが大好きだったから。優しい子だったんだよね。
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