そして、時夫の時が動き出す

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 僕は再び泣き出したシロちゃんの顔を見て、泣かないように鼻を啜った。  僕たち2人はお互いに抱きしめ合った。シロちゃんはずっと僕の腕の中で泣きじゃくっていた。シロちゃんは笑顔が似合う子なのに、せっかくの可愛い顔が台無しだよ。  それでも、僕にはシロちゃんの涙を止めてあげる術がない。泣かせることはできるのに、本当おかしな話だよね。  ようやくシロちゃんが泣き止む兆候を見せ始めると、僕はそっと彼女の頭を撫でてやる。彼女の頭は真っ白でふわふわなマシュマロのようだ。その頭は雪の色にも似ていたんだけど、断然こっちの方が暖かくて心地良い感触だ。 「シロちゃん」  僕が彼女に呼び掛けると、シロちゃんは腕の中で少し身動ぎした。 「冒険ができなくなっても、僕たちは会えるんだよね?」  シロちゃんはその言葉に対して、ただ黙り込んでいるだけだった。答えられないということは、まさか。  僕は少しゾッとして、シロちゃんに慌てているのを見せないようにゆっくり語り掛けた。 「シロちゃん、冒険できなくなっても、僕に会っちゃいけないってことじゃないんだよ」  シロちゃんがゆっくりと顔を上げる気配がした。
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