ずっと、忘れない

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その同窓会に梨江が姿を現した途端、一瞬その場が、しんと静まった。 ひらひらした流行りの服に身を包んだ同性の級友たちが、互いにつつき合いながら露骨にこちらを伺う様子は、まるで色とりどりのインコが、キーキーと声を上げてせわしなく群れているようにも見える。 だがそれも無理のない話かもしれない。中学の時の梨江は、小太りでニキビのひどい、地味を絵に描いたような少女だったからだ。 なまじ色白のせいで、ニキビも肥満も余計に目立つのが災いして、デリカシーの欠片もない同級生の男子から、白ブタだのクレーターだのと心ない嘲りを受けたことは数限りない。 同性の友人たちにしても、正面きってからかいこそしないものの、心の中で「まず梨江には勝ってる」と、自己アゲしているのは明らかだった。 だが10年という時の流れは、梨江を “ 白ブタのクレーター ” のままにはしておかなかった。 高校を卒業するころには、あれほど悩まされたニキビは跡形もなく消え去り、本来の白く艶やかな肌が目を覚まし始めた。思春期特有の脂肪の増加も、ある時期からは嘘のように落ち着いたことに、誰よりも梨江自身が驚いたものだ。 多くの女性が夢見る、棒のようなスリム体型ではないものの、女性らしい柔らかさが漂う梨江の体つきは、むしろ多くの男性の目を惹きつけた。 堅苦しい制服から解放され、化粧とお洒落を覚えた梨江が見事な蝶に生まれ変わるのに、さほどの時間はかからなかった。
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