12人が本棚に入れています
本棚に追加
看護師に誘導され談話室に通された。しばらく待つよう告げられ、僕は静かに目を閉じて深呼吸をした。
扉の開く音がした。目を開けると、有村さんが立っていた。
僕は椅子から立ち上がり、有村さんと向き合った。有村さんは僕を見つめ、ドアノブに手をかけたまま、動かなかった。
そして、彼女は笑った。
あぁ、この笑顔。僕が待っていたのは、この笑顔だ。
「お久しぶり」
僕は声をかけた。彼女は1つ頷いて、僕の前にある椅子に腰かけた。
また1から始めよう。
少しずつ、思い出していけばいいよ。
焦らずに。
そして今度こそ、ちゃんと言わせてほしい。
『僕は、有村早希が好きです』と。
最初のコメントを投稿しよう!