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この人は真っ直ぐだ。真っ直ぐに僕らに変化を求めてくる。
「いいでしょう。赤口さんと一緒に戦隊やりましょう。その前にあなたのことを教えてください。戦隊やりたい理由を」
医者や政治家になれないから。それだけではないと思った。聞かなければならない。これから背中を預ける相手として。
「俺さ、貧乏なんだよね。しかも親が毒親でさ。弟いたけど、貧困と虐待がもとで死んで、俺は施設に入れられた。施設ん中で考えたよ。どうしたら弟を救えたのかって。どうやったって弟は帰ってこないけど、せめて同じ境遇の人を救いたいって。でもさ勉強なんかいくらしたって俺には全く理解できなくてさ。だったら直接救うヒーローになればいいんじゃないかって……。俺もさ、いつまでも弟を救えなかったのをうじうじ悩んでいる弱虫なんだよ。ただ逃げ場所探しているだけなのかもな……」
赤口さんは天井を見上ぐ。
「迷惑だと思うなら、いつ抜けてもいい。俺のためにいつまでも相手させる訳にはいかないからね」
なるほどと僕は頷いた。そして、テーブルの上にあった青いマスクを手に取る。
「連絡先、ちゃんと教えて下さい。僕ら三人、過去を精算してヒーローに化けていきましょう。いいよね灯里さん? 赤口さん、僕らはあなたを絶対に逃しませんから」
灯里さんもピンクのマスクを取り鞄に入れる。
「赤口さん、これからご指導ご鞭撻お願いします」
「マジか……」
赤口さんは目を見開いて驚いた。
きっと今まで沢山誤解をされてきた人だろう。この人に身を預けても悪くない。
「マジです。それに僕はどうやら灯里さんとは一生の付き合いになるようですし」
灯里さんの顔は赤くなっている。先程、僕を私のパートナーと言ったのはプロポーズと同じだろう。僕も心構えができた。
「ありがとう」
赤口さんはテーブルに頭をつける。
「本当にありがとう……」
「赤口さん、僕らはまだ何も活動していません。感謝はお互いにヒーローになったあとにしましょう」
今日、僕らは戦隊になった。僕らがどう化けるのはこれからの話だ。
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