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「ほう来るか!」
暴漢は灯里さんを僕に投げつけてくる。
僕は咄嗟に灯里さんを抱える。
「女性を粗末に扱うな!」
叫んだ瞬間、僕の顔面に拳が打ち込まれた。
「ヒーロー気取りのマスクだろうが、喧嘩にゃ卑怯な手もあるんだぜ!」
灯里さんを抱えたまま、僕はよろけて倒れてしまう。
「陽介さん!」
立たなきゃ……。立たないと……。クラクラする頭を抑えながら立ち上がると状況はまた一変していた。ピンクのマスクを被った灯里さんと赤いマスクを被った男の子。二人が僕の横に立っていた。
「陽介さん……これからの私を見て幻滅したら分かれてくれていいので」
灯里さんは暴漢に走って向かい、跳ねてかかと落としを一撃お見舞いする。
「このアマぁぁぁ!」
暴漢は灯里さんに手を出そうとするが、その拳を赤いマスクの男が受け止めた。
「君には分からんだろう。変わろうとする人の気持ちを。化けようと抗う人の心情を」
男は暴漢の腹に一撃を入れる。ドッと重い音がした。
灯里さんは僕の横につく。
「陽介さんは無理はしないで」
「いや……。誰かを守らなきゃならないときに無理できなくて、いつするんだよ……」
「よく言った! とどめは君に譲ろう!」
赤いマスクの男は暴漢に背を向ける。暴漢は男に拳を振り下ろそうとするが僕が割って間に入り、即座に暴漢の腹に肘打ちを打ち、そのまま右足を高々あげてかかとを脳天に落とした。
ズザっと暴漢は倒れていく。それを確認してから僕ら三人は急いでその場を離れた。
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