理想と現実

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「あら。そんなにヤキモチ焼くなら、今日私と部屋替わる?」 相変わらずニヤニヤとした笑みを浮かべる風香にそう訊ねられ、 「……は?」 伊吹は怪訝そうな顔を風香へと向けた。 「替わるなら早めに言ってくれないとと思って。今からチェックインするし、荷物運び込んじゃった後で部屋の移動頼まれてもめんどうだから」 「えっと……?」 意味が分からず首を傾げる伊吹に、 「部屋割りの話。ミヤちゃんと同室にする? って聞いてるの」 普段は塩対応すぎる彼がどんな反応を見せるのかと期待した風香が再び質問。 「……ぼ、僕が、ミヤと同室!?」 瞬時に赤面した伊吹は、大慌てで都古の腰から手を離す。 「あれ? 普段から伊吹の部屋にお泊まりしに来てるんじゃないの? 都古さん」 依央も不思議そうにコトリと小首を傾げて、 「そ、それはまだ……これから誘おうとは思ってた、けど」 伊吹は真っ赤な顔を俯けて、聞こえるかどうかくらいの小声でごにょごにょ。 「じゃあ問題ないんじゃない? ね、ミヤちゃん?」 一応都古の意見も聞いておくか、と風香が都古へと話を振り、 「ふーちゃんは? 依央くんと同室になっちゃうよ?」 都古は風香の顔を恐る恐る覗き込んだ。 「んー? 大丈夫でしょ、多分。私、腐女子だし」 「ボクも流石に、ボクと伊吹でBLの妄想してるような人とは間違いは起こさないかな……都古さんとなら間違えたいけど」
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