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本当は、伊吹の両親は都古の両親へ挨拶と事情の説明をしていたらしいのだが、肝心の伊吹から都古への説明や挨拶は何もなかった。
「あれは……僕自身、父さんが海外赴任するって言ったことの意味を分かってなくて……都古先輩に全く会えなくなるなんて思ってなかったですし」
ますます悲しそうな目をする伊吹に、都古の胸がズキッと痛む。
「まぁまぁ、ミヤちゃん。後輩イビリもその辺にしとこうよ」
自分の席に鞄を置いて、中の教科書を机に移し替えていた風香が、作業を終えて都古と伊吹の間に割って入った。
「失礼ですが、僕は都古先輩にイビられてなんかいませんよ。寧ろ、愛情たっぷりに接していただいているつもりです」
何の冗談なのか、至って真面目そうな、キリッと引き締まった表情で風香を見据える伊吹。
「げっ。申し訳ないんだけど、愛情とか何も考えずに思ったまんまを言っただけよ?」
都古は露骨に嫌そうな顔をしながら告げて、
「大丈夫です。都古先輩はツンデレで、今のもただの照れ隠しだって、僕分かってますから」
しかし、伊吹は全く動じず、
「全然分かってない!」
「あははっ!」
二人のやり取りをすぐ傍で立ったまま見ていた風香が盛大に噴き出した。
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