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「そんなことより、都古先輩。さっきチラッと聞こえてしまったんですけど……まだシュンサンとかいう人のこと、引きずってるんですか?」
不意に伊吹の顔から笑顔が消えて、ムスッと不機嫌そうな表情になる。
「都古先輩の美しさを理解出来ないような輩なんて、さっさと諦めてしまえばいいのに」
「見た目だけで判断してくるような人よりは、ずっとずっと魅力的よ」
そんな薄っぺらな愛情なんて、都古は望んでいない。
だから、
「僕は都古先輩は見た目だけじゃなくて中身も可愛くて美しい人だってちゃんと知ってますよ。何しろ、都古先輩とは幼なじみ同士ですからね」
何故だか口説き文句を沢山並べ立ててくる伊吹の方こそ、都古にとっては最も信用出来ない人物だ。
「どうです? 僕も十分に魅力的なのでは?」
「はぁ……いや、でもそれを私にアピールされても」
柔らかな白金の髪に、陶器のような白い肌、青みの強いグリーンの瞳を持つその顔は、まるで精巧に作られた人形のように美しく、ただ瞬きをしただけで幻想的な空気を放つ。
中等部に入学してきたばかりなので身長はまだ低いものの、丁寧で大人びた口調には心なしか独特の色気も伴う。
彼のこの話し方は、両親が通訳の仕事をしているらしいので、そこに由来しているのだろう。
親の仕事の都合で海外生活が長かったらしいが、そんなことは微塵も感じさせないほどに流暢で綺麗な日本語を扱っている。
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