理想と現実

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見た目は美少女だが中身はしっかり男子な依央は、可愛い女の子を紹介してもらえたことが嬉しかったようだが、 「ごめんね。ふーちゃんは自分の恋愛に興味がなくて、推しと推しを頭の中でカップリングさせて楽しむのが趣味の腐女子だから」 都古の申し訳なさそうな様子を見て、 「ま、まさかボクと伊吹が都古さんを取り合う図を想像――」 依央はそんな予想を立てた。 ――が、 「ごめんな、依央。南先輩は、僕と依央の方をくっつける妄想をしたい人なんだよ」 フッ……と悟りでも開いてしまったかのような表情の伊吹が、依央の肩にポンと優しく手を置く。 「え?」 困惑する依央に向かって、 「あ、朝倉くんの見解はちょっと惜しい。ミヤちゃんと君で、朝倉くんを取り合う図を妄想してるわ」 風香は笑顔で更なる追い打ちをかけた。 「そっか……腐女子って言ってたもんね。あ、ボクは田辺 依央です。こんな格好をしてるけど、恋愛対象は可愛い女の子だから、伊吹とはそういう仲じゃないからね?」 「あら、そうなの? でもその見た目だったら別に、ミヤちゃんと並べば百合っぽくて私の妄想は掻き立てられるから全然オッケーだけどね」 風香はニヤニヤと意地悪げに伊吹の方を見ながら言って、 「ミヤは僕の彼女なので全然良くないですよ、南先輩」 露骨にムッとした伊吹が、都古の腰を強めに抱き寄せて“僕の恋人だ”とアピールする。
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