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「そんなことないわよ! 俊さんだってめちゃくちゃカッコイイもん!」
俊の悪口を許さない都古が、丁度辿り着いた自分の教室の扉を、バンッと勢いよく開けた。
その音で、教室内にいた他の生徒たちの注目を浴びることになってしまったが、都古はそんなことを気にすることなく、自分の席へと直行する。
肩の鞄を机に下ろして椅子に座ると、
「都古先輩、おはようございます。お待ちしておりました」
まだ幼さの残る男の子の声が、頭上から降ってきた。
「……」
ギギギ、という音が鳴りそうな動きでゆっくりと顔を上げると、
「あぁ……相変わらず、今日もとてもお美しいですね」
白色に近いサラサラの金髪に、青みがかった緑色の瞳が美しい美少年が、都古のすぐ傍に立っていた。
この学校の高等部の男子の制服はブレザーなのだが、今目の前にいる彼は、中等部の黒い学ランを着ている。
……そう。
この少年は、この春に中等部に入学してきたばかりの、都古の後輩にあたる存在なのだ。
「……朝倉くん。あなた、中等部の子でしょ。早く自分の校舎に戻りなさいよ」
中等部と高等部では、そもそも教室のある校舎が違う。
校舎同士は連絡通路で繋がってはいるものの、昇降口はそれぞれに設けられていて、中等部の生徒と高等部の生徒が鉢合わせる機会を少なくしているのだ。
しかし、この朝倉 伊吹という金髪碧眼の美少年は、そんなことも気にせずに都古に会いに、連絡通路を渡ってやってくる。
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