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あと5分!!
ま、間に合わない!! 急がないと・・・!!!!
目覚ましが止まっていたせいで、いつもの時間に起きれなかった。
いつもの電車に乗りたいのに・・・
駅の改札から、階段を駆け上がってそのまま止まっていた電車に飛び乗る。
ホームでは、駆け込み乗車を注意するアナウンスが流れたがが、ドアの締まった車内では微かに聞こえる程度。
そんな事よりも、この電車に乗る事が大事だった・・・・・んだけど・・・。
あ、あれ??????
もしかして、電車が違う?!
車内にいる乗客の顔をそれとなく見ると、毎朝同じ車両にいる人達とは少し違う事に気がついた。
だって、あの人がいない!!!
何気に、ホームの方を見るとあの人の姿があった。
腕時計と電光掲示板の案内を交互に見比べて、携帯電話で何やら話してる様子だった。
丁度その時、発車した電車の車内アナウンスで、人身事故による遅延でダイヤの乱れが出てると流れてきた。
ま、まじかぁ・・・。
乗ってしまった電車を降りて戻る事なんて今日はもうできない。
仕方なく、その電車内で自分のポジションを探す事にした。
あの人と同じ電車になれなかったのは残念だけど・・・
いつもの乗客と違うのも、同じ毎日には刺激になるしな。
窓際にいる学生
中吊にぶら下がる様に掴まってるサラリーマン
音漏れしている人
文庫を読んでる人
その中で、自分のポジション決めた。
あとは、終点までだ。
車内は遅延の影響もあり、満員ではあったがチラホラと終点までの間に降りる人がいた為、決めたポジションにうまく立つ事ができた。
そこに立つと前の人のシャンプーの香りがした。
電車が揺れる度に、体がぶつかる。
こちらを見て、小さく会釈をされる。 こちらも会釈を返す。
揺れで体がぶつかる事なんて、こんなに混んでいる車内
仕方のない事
今日の自分のポジションは文庫を読んでいる学生の後
まだ、成長途中の幼さの残る身体だが、この満員電車でも吊革に掴まりながら立っていられる体幹の良さは、スポーツか何をしているのかも知れない・・・。
そんな事を思わず考えていたら、ガラス越しに目があってしまった。
ガラス越しに見るその子は、キリッとした目でこちらを見た様な気がしたが、またすぐに文庫へと視線を戻した。
遅延が有ったとはいえ、いつもの時間に乗った電車が目的の終点につくまであと一駅。それまでに一度大きく揺れるポイントがある。
それまでは、車内の揺れに合わせる様に自分の身も揺れる
文庫の学生も、もう身体が当たっても反応しなくなっていた。
終点まであと5分
ああ、今日もいい一日が過ごせそうだ。
大きな揺れに合わせて、文庫の学生に身体が密着した
その瞬間
「この、痴漢!!!!」
思いっきり手を掴まれ、捻りあげられる
騒然とする車内の中で、何が起きたのかわからなかった
「!!!」
「オイ、さっきから揺れに合わせて、人のケツに擦り付けてんじゃねーよ!!」
そう言いながら、着いたホームにそのまま下ろされる。
「な!! そんな事は!!」
「はぁ? そんなもんだして、言い逃れできねーんだよ!!」
ああ、ツイてない・・・
目覚ましさえ止まらなければ・・・
いつものあの人だったら、こんな事にはならなかったのになぁ。
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