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あ、今日来てたんだ…
仕事帰り明かりがついてる自分の部屋を下から見上げながら思う。
連絡くらいいれてよ。
『…今日、来るって言ってたっけ?』
玄関を開けながら、顔を見なくても分かる相手に話しかける。
「おかえり、楓」
「……っ、」
こうして、時々やってきては私を繋ぎ止める。
この人にそんなつもりはなくても、私には十分過ぎる。
この人は、残酷で狡い。
どうして突き放してくれないのか。
一瞬の温もりだけ残して、すぐに離れていく。
それなのに、愛しくてたまらない。
笑顔が、名前を呼ぶその声が、
私をこの人に縫い付ける。
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