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東堂高雅 視点 時間軸は尊が初めて東堂のマンションにきた日の夜〜
ベットルームに尊を残し、東堂はダイニングに戻ってきていた。
そのままになっていた食器をシンクへ運ぶとゴミ箱に入れた、リストが目に入った。
過去に送られていたブリーディングリスト。
あの中に、尊の名前は無かった。
家のポストに入っていたっものを、ハウスキーパーが保管していただけでも3通・・・・
それより前のモノは、もう処分してしまっていたけど、この半年分。事務所に届いていた分もあの後確認した時けど、そこにも尊の名前はなかった。
その事に、思っていた以上にホッとした・・・
けれど、それも一瞬だった。
事務所で過去のリストを見ていると、雅が書類片手に入ってきた。
「何? 高雅、ついに番う気になったのか?」
ノックと共に、中に入ってきた叔父の問いにリストから顔をあげる。
「・・・ああ。 とりあえずは・・・な。」
「それって、これにも関係ある事かな?」
「・・・雅、さっさとよこせ。」
手にしていたリストをデスクに置いて、代わりに叔父から封筒を受け取ろうと手を伸ばした。
「・・・・、叔父さん。」
封筒から手を離す気配の無い叔父に、ため息を吐きながら高雅は両手を上げ、降参のポーズをとった。
「ったく・・・で? 叔父さんが気になってんのはどれ?」
「おや? 今回は、降参が早いね。 そんなにコレって大事な内容なのかい?」
「・・・さぁ? それ次第だな。」
封筒を高雅に手渡し、叔父はそのままデスクに腰をかけた。
「ふーん。 ・・・ところで、その子は可愛いのかい?」
封筒の中から、書類を出し中の内容を確認しながら、叔父の質問に答える。
「・・・何がだ?」
「何がって、もちろん高雅の相手の子だよ。」
「・・・・・・・・・。」
「リストに載ってたんだろ?」
さっき高雅が置いたリストを手にすると中を捲っていく。
パラパラとリストを見てる叔父を横目に、高雅も受け取った書類を見ていく。
「・・・高雅。ところで・・・・もし、その子とブリーディング出来なかったらどうするんだい?」
いつの間にかリストを見るのをやめ高雅を見ていた叔父が、高雅が書類を見終わったのを確認してから今度は声をかけてきた。
「・・・、別にどうもしない。」
「ふーん。 まぁ、今回希望出してダメだったら、高雅の運命の相手は他にいるって事だしね。」
「・・・運命なんて、信じてない。」
「そう? けど、この機関の性能はかなり良いから、その子とダメでももっと良い子と出会えるしね。それに、過去のリストからもブリーディングしてくれるし・・・。」
「・・・はぁ?! 今回のだけじゃないのか?」
「優先順位は、期限内リストからで、そのリストのΩと基準以下の相性だった場合は過去のリストから国が勝手にピックアップしてくるんだよ。 まぁ、そういうのは結構稀だけど。」
「・・・そ、そんな勝手な!!」
「勝手って・・、ここに書いてあるし。」
リストと一緒に送付されていた案内を指さす。
確かに色々と、注意事項や案内が書かれていた。
「チッ・・・。こんなのに、何がわかるんだってんだ・・・。」
思わず、リストを投げ捨ててしまうと、雅が丁寧に拾いシュレッダーにかけ始めた。
「・・・珍しいね。高雅がそこまで感情を乱すなんて・・・。いちをこれ、個人情報だから、ちゃんと処理はしないと・・・。もし、結果が望むモノじゃなくても、ちゃんと受け入れるんだよ。」
そう残して、雅は事務所を出て行った。
結果が望むモノじゃない・・・
そんなの、わかっている。
けれど、もし結果が望むモノだったら・・・・そう、願いを込めて高雅はあの日、リストの返信を出していた。
この時間が、結果が来たら壊れてしまうかもしれない・・・・
けれど、リストに尊が載っている時点で、いつ他のαとブリーディングする事になるかもわからない・・・。
それなら、先に自分が尊の番になれば、運命のαより先に・・・そう、何度寝ている尊のネックガードに手をかけようとしたか・・・。
ゴミ箱のリストを拾いキッチンに置くと、ベットルームで寝ている尊の姿を見に戻る。
ぐっすりと寝ている尊を見れば、そんなドス黒い気持ちも和らぐ。
こんな近くで、あの頃は叶うことの無かった、寝顔をみる事ができるなんて・・・。
顔に掛かった前髪を掬い上げ、寝ている尊の額にキスをする。
くすぐったそうに、顔を背けてしまうが、起きる気配は無い。
慣れてない尊に、無理をさせている自覚はある。だから、せめて検診の前は自重しようとも思ってはいたのだが・・・。今日の尊は、可愛かった。
コロコロと表情が変わり、時折こちらを伺うように見たりして・・・
その全てが、窓ガラスが鏡のように反射して写していたのだった。
可愛い可愛い、俺の尊・・・。
そんな尊を、悲しませたくない。
髪を撫でながら、雅が持ってきた報告書の中身を思い出していた。
尊の部屋に残された体液から、複数のDNAが検出された。
その内、登録のあったαが数名とΩが一名。
微量の身元不明βのDNA。これに関しては、もう少し時間を掛ければ解析できと、報告書には書かれていた。 あの、監視カメラの映像にあったメガネだと決めつけていた分、この報告書には少しがっかりしてしまったのが、高雅の本音ではあった。
まぁ・・・先に、こいつから片付ければいいか・・・。
もう一度寝ている尊の額に口付け、優しく抱き寄せて高雅も眠りについた。
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