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その顔は、過去に何回か見たことがあった。
自分が、Ωやβにどう見えるのか気にした事は無かったが、雅叔父さんを見ていれば嫌と言う程に分かった。俺はα特有の力が強いらしい。
強いαは、人を惹きつけ魅了する。
時に、支配し、その頂点に君臨する。
そんな、αがβだらけの中で上手くやれるはずが無いのだ。無意識下でβはαに従うか、排除するか・・・。
あの高校は、前者。βの教師達が、自分の顔色を伺っているのは気がついていた。
何をしても、腫れ物に触るように・・・。
叔父に薦められるまま、進んだ大学で嫌と言うほどそれを感じた。
αだらけの大学は、面白いほどに自分に馴染み、そして、今の仲間とも出会えた。
だからこそ、高校での事は無駄じゃないと思ってるが・・・・
言葉を続けられずにいた、東堂に何を思ったのか音羽が白衣のポケットから名刺を取り出した。
「はぁぁ・・・。 僕は、もう番がいるから・・・何かあったら相談においで!」
名刺を出され、一瞬躊躇する東堂の姿をみて音羽が声を立てて笑い出す。
「だから、番いるって言ってんだろ。 全く、ミヤ君と同じリアクションやめろよな。そっちはプライベートクリニックの方のだよ。 前に来ただろ?」
「あ、ああ・・・。ありがとうございます?」
「じゃ、次は君の血液検査の結果出た時に2人できて。」
「・・・・はい。」
音羽の行動が理解できなかった。
誘われたのかと一瞬、構えてしまったが番がいると言われ、あからさまに安堵してしまった。
その事を笑われて、ちょっと恥ずかしくなる。
思わず、視線を逸らすと、また小さく笑われた。
「当分、ミヤ君には薬飲ませない様に。 あと、君も飲むの止める様に・・・と、言っても急にはやめれないだろうから、少し弱目の物に変えたらいい。あと、朝まで寝れる薬出してあげるよ。」
「・・・解りました。」
「大丈夫。そんなすぐに、来ないから。安心して。」
そう言った音羽の顔は優しく微笑んでいた。
その言葉に、なぜだか泣きそうになっていた。
Ωにとって、αの薬が毒になのは解っていた。けれど、どうしても尊には発情して欲しく無かった。そうなって仕舞えば、運命なんて関係なく俺は尊の頸に噛みつきたくなる。
また、尊も本能でそれを願うだろう。それはΩの性として。尊が俺自身を望まなくても・・・。
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